会社設立時の定款とは?
事業目的・本店所在地・資本金・役員の決め方を解説

会社を設立するときに必ず作成する重要な書類が、 「定款」 です。

定款には、 会社名、本店所在地、事業目的、 資本金に関する事項、発起人、株式、役員、 事業年度など、 会社運営の基本となるルールを定めます。

会社設立後に 「事業目的が足りなかった」 「本店所在地を変えたい」 「役員構成を変えたい」 ということになると、 変更手続きや登記が必要になる場合があります。

そこで今回は、 株式会社設立時の定款について、 特に重要な 事業目的・本店所在地・資本金・役員 を中心に解説します。

定款とは?
定款とは、 会社の基本的なルールを定めた 「会社のルールブック」のようなものです。

会社を設立する際には、 法律上必要な事項を記載した定款を作成し、 株式会社では原則として 公証人による認証を受けます。

定款には何を書くの?

定款には、 会社法上、 必ず記載しなければならない事項と、 必要に応じて定める事項があります。

区分 内容
絶対的記載事項 記載しなければ定款自体が有効に成立しない事項
相対的記載事項 定款に定めることによって初めて効力が生じる事項
任意的記載事項 法律に反しない範囲で、会社独自のルールとして定める事項

株式会社の絶対的記載事項

株式会社では、 主に次の事項を定款に記載します。
  • 会社の目的
  • 商号
  • 本店所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額または最低額
  • 発起人の氏名または名称・住所
絶対的記載事項が欠けていると、 定款として有効に成立しない場合があります。

① 事業目的はどう決める?

定款の中でも、 実務上とても重要なのが 事業目的 です。

事業目的には、 会社がどのような事業を行うのかを記載します。

「今行う事業」だけでなく、 近い将来行う予定の事業も検討しておくことが重要です。

事業目的は具体的に書く

事業目的は、 会社が何を行うのか分かるように 適切な文言で作成します。

不動産関係

不動産の売買、賃貸、管理、仲介など、 実際の事業内容に応じて記載します。

建設関係

建築工事、土木工事、内装工事など、 予定する業務を検討します。

コンサルティング

どの分野のコンサルティングを行うのか 整理して記載します。

物品販売

実店舗、通信販売、インターネット販売など、 事業内容に合わせて検討します。

「その他一切の事業」だけでは十分?

事業目的の最後に、 「前各号に附帯または関連する一切の事業」 などの文言を置くことがあります。

これは便利な条項ですが、 この一文だけで まったく別の新規事業を何でも行えると考えるのは適切ではありません。

主要な事業は、 できるだけ具体的に事業目的へ記載しておく方が安心です。

許認可が必要な事業では事業目的が重要

建設業、宅建業、古物営業など、 許認可が必要な事業を行う場合には、 会社設立時から 許認可を見据えて定款を作成することが重要です。

会社を設立した後に 「許認可を取りたい事業が目的に入っていない」 と分かると、 定款変更や目的変更登記等が必要になる場合があります。

建設業を予定している場合

将来、 建設業許可を取得する予定がある場合には、 行う工事内容に応じて 事業目的を検討します。

例えば、
  • 建築工事業
  • 土木工事業
  • 内装仕上工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • 機械器具設置工事業
など、 実際に予定する工事内容を整理します。

許可業種との整合性も考えながら 事業目的を作ることが重要です。

宅建業を予定している場合

宅地建物取引業免許を予定している場合には、 不動産の売買・交換・媒介等、 予定する業務に応じた目的を検討します。

会社設立と宅建業免許を別々に考えず、 会社設立時から免許申請を見据えることが重要です。

将来やるかもしれない事業を全部入れるべき?

将来行う可能性のある事業を ある程度盛り込んでおくことには意味があります。

しかし、 まったく予定のない事業を 大量に羅列する必要があるとは限りません。

事業目的が多すぎると、 「実際には何をする会社なのか」が 分かりにくくなる場合があります。

現在の事業と 数年以内に予定している事業を中心に 整理するとよいでしょう。

② 本店所在地はどう決める?

定款には 会社の 本店所在地 を定めます。

会社法上、 定款では最小行政区画までを記載する方法と、 具体的な住所まで記載する方法があります。

市区町村まで記載

例:神奈川県川崎市

同じ市区町村内で本店を移転する場合、 定款変更が不要となる場合があります。

番地まで記載

例:神奈川県川崎市○○区○○1丁目2番3号

定款上の住所が明確になりますが、 住所変更の際に定款変更が必要になる場合があります。

自宅を本店にできる?

自宅を本店所在地として 会社を設立できる場合があります。

ただし、 賃貸住宅やマンションの場合には 注意が必要です。

賃貸借契約や管理規約で 事業利用・法人登記が禁止されていないか確認しましょう。

許認可事業では「登記できる」だけでは足りない

会社登記上、 本店所在地として使用できても、 許認可上の営業所・事務所として 認められるとは限りません。

例えば、 建設業許可
宅建業免許
などでは、 営業所・事務所の独立性や使用権限等について 確認が必要になる場合があります。

バーチャルオフィスは使える?

会社登記自体は可能なケースでも、 許認可や銀行口座開設等では 別の問題が生じることがあります。

「登記可能」と「事業に適した事務所」は別問題です。

許認可業種では、 実体のある営業所が必要となることがあります。

③ 資本金はどう決める?

資本金は、 会社設立時に出資者が会社へ拠出する資金です。

法律上は少額でも設立可能ですが、 実際には 事業を始めるために必要な資金 を考えて決める必要があります。

資本金を決めるときには、
  • 事務所賃料
  • 設備購入費
  • 仕入代金
  • 広告費
  • 人件費
  • 当面の運転資金
  • 許認可上の財産要件
  • 取引先・金融機関への説明
などを考えます。

資本金1円でも会社は作れる?

制度上は、 1円の資本金でも株式会社を設立できます。

しかし、 会社設立直後から さまざまな費用が発生します。

「設立できる金額」と 「実際に事業を続けられる金額」は別です。

事業開始後、 数か月間の支出も見込んで 適切な資本金を検討することが重要です。

資本金が多ければ多いほど良い?

資本金は多ければ必ずよいというものでもありません。

資本金額によっては、 税務その他の制度上の取扱いが変わる場合があります。

資本金は、 事業計画・許認可・税務・資金調達を総合して決める ことが大切です。

税務面については、 税理士へ確認すると安心です。

許認可と資本金

許認可によっては、 財産的基礎等の要件があります。

「資本金を一定額にすれば必ず許可が取れる」 という単純なものではありません。

例えば建設業許可では、 許可区分等に応じて 財産的基礎等を確認する必要があります。

④ 発起人は誰にする?

株式会社を設立する人を 発起人 といいます。

発起人は、 定款を作成し、 設立時発行株式を引き受けます。

一人で株式会社を設立する場合には、 発起人1人
株主1人
取締役1人
という会社も可能です。

複数人で会社を作る場合は出資割合が重要

複数人で会社を設立する場合には、 誰がどの程度出資するかを慎重に考える必要があります。

株式の保有割合は、 会社の重要事項を決める際の議決権に大きく関係します。

「仲が良いから半分ずつ」 という理由だけで決めるのではなく、 将来の経営権や事業承継まで考えることが重要です。

50%ずつの株式保有には注意

2人で会社を設立し、 株式を50%ずつ保有するケースがあります。

一見公平ですが、 2人の意見が対立すると 重要事項を決められなくなる可能性があります。

株式比率は、 出資金額だけでなく 会社の意思決定まで考えて決めましょう。

⑤ 役員はどう決める?

株式会社では、 取締役等の役員を決めます。

小規模な会社であれば、 一定の条件のもとで 取締役1名というシンプルな形も可能です。

役員を決める際には、
  • 誰が実際に経営するか
  • 代表取締役を誰にするか
  • 取締役を何人置くか
  • 取締役会を設置するか
  • 監査役等を置くか
  • 役員任期をどうするか
などを検討します。

家族を役員にする場合も慎重に

家族経営の会社では、 配偶者や子を取締役にするケースがあります。

ただし、 単に家族だからという理由だけで 役員にするのではなく、 実際の会社運営との関係を考えることが重要です。

役員には会社法上の責任があります。

取締役には任期がある

株式会社の取締役には、 会社法上の任期があります。

非公開会社では、 定款によって一定の範囲で 任期を延長できる場合があります。

任期が満了した場合、 同じ人が引き続き取締役を務める場合でも、 重任登記等が必要になることがあります。

⑥ 株式譲渡制限をどうする?

小規模な株式会社では、 株式を自由に第三者へ譲渡できないよう、 定款に 株式譲渡制限 を設けることが一般的です。

株式譲渡制限を設けることで、 会社が知らない第三者へ 株式が簡単に移ることを防ぎやすくなります。

家族会社や少人数会社では 特に重要な検討事項です。

⑦ 発行可能株式総数を決める

株式会社では、 将来発行できる株式数の上限として 発行可能株式総数 を定めます。

設立時の発行株式数だけでなく、 将来増資する可能性も考えて設定します。

⑧ 事業年度を決める

定款では、 事業年度について定めることが一般的です。

例えば、
  • 4月1日から翌年3月31日
  • 1月1日から12月31日
  • 10月1日から翌年9月30日
などがあります。

決算月は自由に設定できますが、 会社の繁忙期や 税務申告時期などを考えて決めるとよいでしょう。

⑨ 公告方法を決める

株式会社には、 法律上、 一定の事項を公告する制度があります。

定款で公告方法を定める場合には、 官報や電子公告などを検討します。

会社の規模や運営方法に合わせて 適切な公告方法を検討します。

定款に書きすぎると変更が大変になることも

定款には、 会社の細かなルールを 多く書くこともできます。

しかし、 将来変更する可能性が高い事項まで 細かく定款へ書くと、 そのたびに定款変更手続きが必要になることがあります。

「定款に書くべき事項」と 「社内規程等で定める事項」を 分けて考えることも重要です。

株式会社では定款認証が必要

株式会社を設立する場合、 作成した定款について 原則として公証人による認証を受けます。

定款作成から設立まで
会社の基本事項を決定
↓
定款作成
↓
公証人による定款認証
↓
資本金払込み
↓
設立登記

電子定款とは?

定款を電子データで作成し、 電子署名を付して作成する方法があります。

これを一般に 電子定款 と呼びます。

電子定款では、 一定の要件を満たすことで、 紙の定款に必要となる印紙税を 不要にできるメリットがあります。

紙の定款と電子定款の違い

比較項目 紙の定款 電子定款
形式 紙 電子データ
電子署名環境 不要 必要
印紙税 課税対象となる場合あり 一定の電子定款では不要
定款認証 株式会社では必要 株式会社では必要

定款認証で確認されること

公証人は、 株式会社設立時の定款について 必要な確認を行います。

例えば、
  • 定款内容
  • 発起人
  • 本人確認
  • 実質的支配者に関する事項
  • 必要な添付資料
などを確認します。

具体的な必要資料は 設立内容や公証役場によって確認が必要です。

定款認証後に変更できる?

会社設立後も、 所定の手続きを行えば 定款を変更することは可能です。

例えば、
  • 事業目的
  • 商号
  • 本店所在地
  • 株式に関する事項
  • 役員任期
  • 公告方法
などを変更する場合があります。
変更内容によっては、 株主総会の特別決議や 変更登記等が必要になります。

事業目的を後から追加する場合

会社設立後に 新しい事業を始めるため、 事業目的を追加するケースがあります。

その場合、 株主総会で定款変更を決議し、 登記事項に関わる目的変更については 変更登記が必要になります。

将来の事業計画をある程度見据えて 設立時に目的を整理しておけば、 設立後すぐの変更を避けやすくなります。

本店所在地を後から移転する場合

会社設立後に 本店を移転することもできます。

ただし、 定款の記載方法や移転先によっては 定款変更や本店移転登記が必要になります。

許認可を取得している会社では、 本店移転に伴い 許認可上の変更届等が必要になる場合もあります。

役員を変更する場合

会社設立後、 取締役・代表取締役等が変わった場合には、 会社法上の手続きや 役員変更登記等が必要になることがあります。

許認可事業の場合には、 役員変更について 行政庁への変更届等が必要になる場合もあります。

定款と登記簿は同じもの?

定款と登記事項証明書は 別のものです。

定款

会社内部の基本ルールを定めたものです。

登記事項証明書

商号・本店・目的・役員等、 法律上登記された事項を確認するものです。

一部の事項は 定款にも登記にも記載されますが、 両者は役割が異なります。

定款と許認可の関係

許認可業務では、 定款や登記事項証明書を 提出資料として求められることがあります。

例えば、
  • 建設業許可
  • 宅建業免許
  • 古物営業
  • 各種登録・認可
などで、 会社の事業内容や役員等との整合性を確認する場合があります。

建設業許可を見据えた定款

会社設立後に建設業許可を取得する場合には、 定款だけでなく、

  • 会社の事業目的
  • 役員構成
  • 経営業務の管理体制
  • 営業所技術者等
  • 営業所
  • 財産的基礎
  • 社会保険関係
なども合わせて検討します。

会社だけ先に作ってから 許可要件を考えるより、 設立前からまとめて検討する方がスムーズです。

宅建業免許を見据えた定款

宅建業免許を予定している場合も、 定款だけではなく、

  • 事業目的
  • 事務所
  • 専任の宅地建物取引士
  • 役員等の欠格要件
  • 営業保証関係
などを設立前から確認しておくことが重要です。

定款作成でよくある失敗

① 事業目的が足りない

許認可申請時に 必要な目的が入っていないことがあります。

② 目的を入れすぎる

事業内容が分かりにくい会社になることがあります。

③ 本店所在地を安易に決める

賃貸借契約や許認可要件に 問題が出ることがあります。

④ 資本金を低くしすぎる

開業後の運転資金が不足する可能性があります。

⑤ 株式比率を深く考えない

後に経営権をめぐる問題になる可能性があります。

⑥ 役員任期を忘れる

任期満了後の重任登記等を 忘れる可能性があります。

定款作成の一般的な流れ

STEP 1 事業内容を整理
現在行う事業と将来予定する事業を整理します。
STEP 2 商号を決定
会社名を決めます。
STEP 3 本店所在地を決定
登記・事業・許認可の観点から検討します。
STEP 4 事業目的を決定
許認可や将来の事業も考えて目的を作成します。
STEP 5 資本金・株式を決定
必要資金・出資割合・経営権を検討します。
STEP 6 発起人・役員を決定
誰が出資し、誰が経営するかを決めます。
STEP 7 事業年度等を決定
決算月・公告方法等を検討します。
STEP 8 定款案を作成
会社の基本ルールを書面化します。
STEP 9 公証人による定款認証
株式会社では原則として定款認証を受けます。
STEP 10 資本金払込み・設立登記
定款認証後、設立手続きを進めます。

行政書士に相談できること

会社設立では、 単にひな形へ会社名を入れて 定款を作ればよいわけではありません。

会社設立後の事業、 許認可、 将来の事業展開まで考えて 内容を整理することが重要です。

行政書士は業務範囲に応じて、
  • 会社設立前の事業内容整理
  • 定款案の作成
  • 電子定款への対応
  • 事業目的の文案作成
  • 本店所在地に関する事項整理
  • 許認可を見据えた目的整理
  • 設立後に必要な許認可の確認
  • 建設業許可申請
  • 宅建業免許申請
  • その他行政庁への許認可申請
などをサポートできます。
会社設立登記や変更登記の申請代理は 司法書士の専門分野です。

税務相談・税務申告は税理士、 社会保険・労働保険に関する専門的な手続きは 社会保険労務士等の専門分野となります。

定款作成前のチェックリスト

  • 会社名を決めた
  • 本店所在地を決めた
  • 賃貸借契約・管理規約を確認した
  • 現在行う事業を整理した
  • 将来行う事業を整理した
  • 必要な許認可を確認した
  • 事業目的の文言を検討した
  • 資本金を決めた
  • 運転資金を検討した
  • 発起人を決めた
  • 株式保有割合を決めた
  • 経営権への影響を確認した
  • 取締役を決めた
  • 代表取締役を決めた
  • 役員任期を検討した
  • 株式譲渡制限を検討した
  • 発行可能株式総数を検討した
  • 事業年度を決めた
  • 公告方法を検討した
  • 定款認証に必要な資料を確認した

まとめ

① 定款は、会社の基本ルールを定める重要な書類です。

② 株式会社では、目的・商号・本店所在地・出資に関する事項・発起人等を定款に記載します。

③ 事業目的は、現在の事業だけでなく、近い将来の事業や許認可も考えて作成します。

④ 本店所在地は、登記だけでなく、賃貸借契約・管理規約・許認可上の事務所要件まで確認します。

⑤ 資本金は「会社を設立できる最低額」ではなく、実際の運転資金や許認可も考えて決めます。

⑥ 複数人で出資する場合は、株式保有割合と経営権への影響を慎重に検討します。

⑦ 役員は、実際の経営体制・任期・責任まで考えて決めます。

⑧ 株式会社の定款は、原則として公証人による認証が必要です。

⑨ 電子定款を利用することで、紙の定款にかかる印紙税を不要にできる場合があります。

⑩ 会社設立後の許認可まで考えて定款を作成することが、スムーズな開業につながります。

定款は「会社を作るためだけの書類」ではありません
事業目的
+
本店所在地
+
資本金
+
株主構成
+
役員構成
+
将来の許認可


これらをまとめて設計することで、 設立後に使いやすい会社 を作ることができます。
会社設立・定款作成・事業目的・許認可について
お気軽にご相談ください
「定款の事業目的をどう書けばよいか分からない」
「資本金はいくらにすればよいか迷っている」
「建設業許可を前提に会社を設立したい」
「宅建業免許を取得する会社を作りたい」
といった段階からご相談いただけます。
川崎駅前通行政書士事務所
TEL:090-5429-0927
会社設立・定款について相談する
定款作成・電子定款・事業目的の整理・
設立後の建設業許可・宅建業免許等についてご相談いただけます。