相続財産の調査はどうする?
預貯金・不動産・株式・借金の調べ方と注意点を解説

相続が発生したとき、 まず必要になるのが 「亡くなった方が、どのような財産や借金を持っていたのか」 を調べることです。

預貯金や不動産だけを調べればよいわけではありません。

株式・投資信託・生命保険・自動車・会社の株式などの プラスの財産だけでなく、 住宅ローン・カードローン・未払金・保証債務などの マイナスの財産 も確認する必要があります。

財産調査が不十分なまま遺産分割を進めると、 後から新たな預金や借金が見つかり、 相続手続きをやり直さなければならなくなる場合もあります。

相続財産調査で確認する4つの柱
① 預貯金

② 不動産

③ 株式・投資信託などの金融資産

④ 借金・未払金・保証債務


このほか、 生命保険、自動車、貴金属、 会社株式、貸付金、デジタル資産等も 確認していきます。

なぜ相続財産の調査が重要なの?

相続手続きを進めるには、 まず遺産の全体像を把握する必要があります。

相続財産の調査は、
  • 相続放棄をするか判断する
  • 遺産分割の対象財産を確定する
  • 遺産分割協議書を作成する
  • 相続税申告が必要か確認する
  • 預貯金の払戻し手続きをする
  • 相続登記を進める
ための基礎になります。
「財産を分ける前に、まず財産を全部調べる」 という順番が重要です。

まず自宅にある資料を確認する

最初から銀行や役所へ問い合わせるだけでなく、 まず亡くなった方の自宅や重要書類を確認すると、 財産の手掛かりが見つかることがあります。

探しておきたいものとして、
  • 預金通帳
  • キャッシュカード
  • 銀行・証券会社からの郵便物
  • 固定資産税納税通知書
  • 不動産の権利証・登記識別情報
  • 生命保険証券
  • クレジットカード
  • ローン返済予定表
  • 確定申告書
  • 源泉徴収票
  • 証券会社の取引報告書
  • 会社関係の資料
  • 借用書・金銭消費貸借契約書
などがあります。

通帳の入出金履歴は重要な手掛かり

銀行通帳には、 本人が利用していた他のサービスや財産を 推測できる情報が残っている場合があります。

例えば、
  • 証券会社への振替
  • 保険料の引落し
  • 住宅ローン返済
  • クレジットカード利用代金
  • 固定資産税の支払い
  • 家賃収入
  • 配当金の入金
などです。

単に残高を見るだけでなく、 過去の入出金履歴を確認することで 新しい財産や負債が見つかることがあります。

① 預貯金はどうやって調べる?

預貯金は相続財産の中でも 中心となることが多い財産です。

通帳から確認

銀行名、支店名、口座番号、 預金の種類等を確認します。

キャッシュカードから確認

通帳がなくても、 カードから金融機関が判明する場合があります。

郵便物から確認

銀行から届いた案内や 取引明細等を確認します。

入出金履歴から確認

他の金融機関への送金や 金融商品取引の手掛かりを探します。

通帳がなくても銀行へ確認できる?

相続人であることなどを証明できれば、 金融機関所定の手続きにより、 被相続人の口座の有無や残高等を 確認できる場合があります。

必要書類や調査方法は、 金融機関によって異なります。

戸籍、本人確認書類、 相続関係を示す書類等を 求められることがあります。

預貯金は「死亡日時点」の残高も確認

遺産分割や相続税の検討では、 死亡日時点の預金残高を確認する必要が生じます。

金融機関へ 残高証明書 の発行を依頼する方法があります。

必要に応じて、 過去の取引明細も取得し、 死亡前後に大きな資金移動がなかったか を確認することもあります。

ネット銀行にも注意

現在は、 紙の通帳を発行しないネット銀行も増えています。

手掛かりとして、
  • スマートフォンの銀行アプリ
  • パソコンのブックマーク
  • メール
  • 銀行からの郵便物
  • 他行通帳からの振込記録
  • クレジットカード・デビットカード
などを確認します。

② 不動産はどうやって調べる?

土地・建物・マンションなどの不動産も、 重要な相続財産です。

まず、
  • 固定資産税納税通知書
  • 固定資産課税明細書
  • 権利証
  • 登記識別情報
  • 売買契約書
  • 賃貸借契約書
などを確認します。

固定資産税の資料を確認する

固定資産税納税通知書や課税明細書には、 所有する土地・建物の所在地等が 記載されていることがあります。

不動産調査では、 住所ではなく「登記上の地番・家屋番号」 を確認することが大切です。

登記事項証明書で所有者・権利関係を確認

不動産の所在が分かったら、 法務局で登記事項証明書等を取得し、 登記内容を確認します。

確認したい内容として、
  • 現在の登記名義人
  • 土地の地番
  • 建物の家屋番号
  • 共有持分
  • 抵当権
  • 根抵当権
  • その他の担保権等
があります。
固定資産税の資料だけでは、 現在の正確な権利関係までは分からない場合があります。

最終的には登記情報を確認することが重要です。

共有不動産も確認する

亡くなった方が 不動産全部を所有しているとは限りません。

親族との共有、 夫婦共有、 相続による共有などのケースがあります。

「持分2分の1」 「持分10分の1」 など、 被相続人が持っていた共有持分も 相続財産になります。

遠方の不動産や山林にも注意

自宅以外に、 昔相続した土地、 地方の実家、 農地、 山林などを所有しているケースもあります。

例えば、
  • 出生地・実家所在地
  • 過去に住んでいた地域
  • 親から相続した土地
  • 別荘
  • 山林・農地
なども確認します。

名寄帳を確認する方法もある

市区町村で管理されている 固定資産関係資料の中に、 名寄帳 があります。

一定の条件のもとで、 相続人等が取得できる場合があり、 その市区町村内で被相続人が所有していた 固定資産を調べる手掛かりになります。

名寄帳は原則としてその市区町村の範囲の資料です。

別の市区町村に不動産があれば、 それぞれ確認する必要があります。

③ 株式・投資信託はどう調べる?

株式や投資信託は、 証券会社の口座で保有されていることがあります。

手掛かりとして、
  • 証券会社からの郵便物
  • 取引残高報告書
  • 特定口座年間取引報告書
  • 配当金通知
  • 銀行通帳の証券会社への入出金
  • スマートフォンの証券アプリ
  • 確定申告書
などを確認します。

ネット証券にも注意

ネット証券では、 紙の取引報告書がほとんど届かない場合があります。

そのため、 メール・スマートフォン・パソコン・銀行口座の資金移動 などから利用していた証券会社を 確認することが重要になります。

上場株式以外の株式もある

被相続人が会社経営者だった場合には、 証券会社で保有する上場株式だけでなく、 自社株などの非上場株式 を所有している可能性があります。

確認する資料として、
  • 会社の定款
  • 株主名簿
  • 法人税申告関係資料
  • 決算書
  • 株券がある場合の株券
  • 会社からの配当資料
などがあります。
非上場株式は、 単に額面金額や出資額だけで 相続税上の価値を判断できるとは限りません。

税務上の評価が必要な場合には、 税理士等へ相談します。

④ 借金は必ず調べる

相続財産の調査で、 特に重要なのが 負債の調査 です。

相続では、 原則としてプラスの財産だけでなく、 借金等の債務も問題になります。

「預金がないから相続財産もない」 とは限りません。

実際には、 借金だけが残っている可能性もあります。

借金の手掛かりはどこにある?

確認するものとして、
  • 金融機関からの返済予定表
  • ローン契約書
  • クレジットカード明細
  • 消費者金融等からの郵便物
  • 銀行口座からの毎月の引落し
  • 督促状
  • 税金の納付書
  • 事業上の借入資料
  • 保証契約書
などがあります。

住宅ローンがある場合

不動産に抵当権が付いている場合には、 住宅ローン等が残っている可能性があります。

登記事項証明書で 抵当権等を確認するとともに、 金融機関へ現在の残債を確認します。

また、 団体信用生命保険等に加入している場合には、 死亡によりローン残高が保険で弁済されることもあります。

実際の適用については、 契約内容や保険の条件を確認する必要があります。

保証人になっていなかったかも確認

本人自身の借入だけでなく、 他人や会社の借入について 保証人・連帯保証人 になっている場合があります。

保証債務は見落としやすい負債です。

会社経営者や事業をしていた方の場合は、 特に注意して確認しましょう。

信用情報機関を利用する場合もある

借金の状況が分からない場合、 一定の要件のもとで、 信用情報機関への情報開示手続きを 検討することがあります。

ただし、 すべての債務が一つの機関に 必ず登録されているわけではありません。

信用情報だけでなく、 郵便物・通帳・契約書・確定申告資料・登記情報 などを組み合わせて 調査することが重要です。

未払税金・施設費・医療費も負債になり得る

銀行借入だけが 相続上の負債ではありません。

例えば、
  • 固定資産税等の未納
  • 住民税等の未納
  • 医療費の未払
  • 高齢者施設利用料の未払
  • 家賃の未払
  • 公共料金の未払
  • 事業上の買掛金・未払金
なども確認します。

⑤ 生命保険はどう調べる?

死亡保険金は、 契約内容や受取人指定によって 遺産そのものとは異なる扱いになる場合がありますが、 相続手続きでは重要な確認事項です。

手掛かりとして、
  • 保険証券
  • 保険会社からの郵便物
  • 銀行口座からの保険料引落し
  • クレジットカード明細
  • 勤務先の団体保険
などがあります。
死亡保険金が遺産分割の対象になるかどうかと、 相続税上どのように扱われるかは別の問題です。

⑥ 自動車・貴金属・その他の財産

預貯金や不動産以外にも、 財産価値を持つものがあります。

自動車

車検証等から所有者を確認します。

貴金属・宝石

金・時計・宝石等も 財産価値を持つ場合があります。

骨董品・美術品

高額な価値を持つ可能性がある場合には、 専門的な評価が必要になることがあります。

貸付金

他人や会社へ貸しているお金も 相続財産になることがあります。

⑦ デジタル資産も確認

近年は、 紙の資料だけでは 財産の全体像が分からないケースが増えています。

例えば、
  • ネット銀行
  • ネット証券
  • 電子マネー
  • オンライン決済サービス
  • 暗号資産
  • ポイント・マイル等
  • オンライン上の収益口座
などがあります。
サービスごとに相続・承継・払戻しの取扱いが異なります。

利用規約や運営会社の手続きを確認する必要があります。

財産調査と相続放棄はセットで考える

借金が多い可能性がある場合には、 財産調査を急ぐ必要があります。

相続放棄には期限があります
相続放棄は原則として、 自己のために相続の開始があったことを知った時から 3か月以内 に家庭裁判所へ申述する必要があります。

そのため、 相続開始後は早い段階で プラス財産とマイナス財産の両方を 調査することが重要です。

3か月で財産が分からない場合は?

財産が複雑で、 3か月以内に相続放棄するかどうか 判断できない場合もあります。

一定の場合には、 熟慮期間が終わる前に 家庭裁判所へ 期間伸長の申立て を検討できます。

期限が迫っている場合には、 早めに弁護士・司法書士等の専門家へ相談しましょう。

相続放棄を考えているなら財産処分に注意

借金が多く、 相続放棄を検討している場合には、 遺産を勝手に売却したり消費したりすることには 注意が必要です。

相続財産の処分等の行為によっては、 法定単純承認に関する問題が生じる可能性があります。

相続放棄を検討している場合には、 財産へ手を付ける前に 専門家へ確認することをおすすめします。

財産調査が終わったら「財産目録」を作る

財産と負債が分かってきたら、 一覧表に整理しましょう。

区分 記載する内容の例
預貯金 金融機関・支店・口座種類・残高等
不動産 所在・地番・家屋番号・持分等
株式等 証券会社・銘柄・数量等
保険 保険会社・契約内容・受取人等
その他財産 車・貴金属・貸付金等
負債 金融機関・借入残高・未払金・保証債務等

財産目録を作るメリット

財産の漏れを確認できる

調査済みの財産を 一覧で確認できます。

遺産分割がしやすい

相続人全員が 財産の全体像を把握しやすくなります。

専門家へ相談しやすい

司法書士・税理士等へ 必要な情報を伝えやすくなります。

期限管理に役立つ

相続放棄や税務申告の必要性を 検討しやすくなります。

財産調査でよくある失敗

① 通帳だけで判断する

ネット銀行・証券・不動産等を 見落とすことがあります。

② プラス財産だけ調べる

借金や保証債務の確認漏れは 大きな問題になることがあります。

③ 不動産の登記を確認しない

共有持分や抵当権等を 見落とす可能性があります。

④ 会社関係を調べない

自社株・会社への貸付金・保証債務等が 残っている場合があります。

⑤ 昔の郵便物を捨てる

証券・保険・借入等を見つける 重要な資料になることがあります。

⑥ 調査前に遺産分割する

後から財産が判明し、 追加の手続きが必要になる場合があります。

相続財産調査の一般的な流れ

STEP 1 遺言書を確認
財産内容や金融機関の手掛かりが記載されていないか確認します。
STEP 2 自宅の資料を集める
通帳・郵便物・契約書・税金関係書類等を整理します。
STEP 3 預貯金を調査
金融機関・残高・取引履歴等を確認します。
STEP 4 不動産を調査
固定資産関係資料や登記情報を確認します。
STEP 5 株式・金融商品を調査
証券会社・株式・投資信託等を確認します。
STEP 6 保険・その他財産を調査
生命保険・車・貴金属・貸付金等を確認します。
STEP 7 借金・保証債務を調査
ローン・カード債務・税金・保証等を確認します。
STEP 8 財産目録を作成
プラス財産とマイナス財産を一覧にします。
STEP 9 相続方法を判断
相続放棄・限定承認・単純承認等を検討します。
STEP 10 遺産分割へ進む
財産の全体像を確認した上で分割方法を検討します。

行政書士に相談できること

相続財産の調査では、 個々の財産を探すだけでなく、 相続人・遺産・必要書類を 全体として整理することが重要です。

行政書士は業務範囲に応じて、
  • 戸籍等の収集
  • 相続人関係の整理
  • 財産関係資料の整理
  • 財産目録の作成
  • 不動産資料の整理
  • 預貯金関係資料の整理
  • 遺産分割協議書の作成
  • 合意のある相続手続きに必要な書類作成
  • 一定の預貯金相続手続きの支援
  • 司法書士・税理士等と連携が必要な事項の整理
などをサポートできます。
相続人間に争いがある場合や、 遺産の帰属・相続分等について交渉が必要な場合には、 弁護士への相談が必要です。

相続登記申請の代理は司法書士、

相続税の申告・財産評価等の税務相談は 税理士の専門分野です。

相続財産調査のチェックリスト

  • 遺言書の有無を確認した
  • 預金通帳を確認した
  • 銀行口座の残高を確認した
  • 過去の入出金履歴を確認した
  • ネット銀行を確認した
  • 固定資産税資料を確認した
  • 不動産登記を確認した
  • 共有持分を確認した
  • 抵当権等を確認した
  • 証券会社を確認した
  • 株式・投資信託を確認した
  • 非上場株式の有無を確認した
  • 生命保険を確認した
  • 自動車・貴金属等を確認した
  • 貸付金を確認した
  • 住宅ローンを確認した
  • カードローンを確認した
  • 保証債務を確認した
  • 未払税金・未払費用を確認した
  • ネット上の金融資産を確認した
  • 財産目録を作成した

まとめ

① 相続財産調査では、預貯金・不動産・株式などのプラス財産と、借金等のマイナス財産の両方を確認します。

② 最初は通帳・郵便物・固定資産税資料・契約書・確定申告書等から手掛かりを探します。

③ 預貯金は金融機関、残高、必要に応じて取引履歴まで確認します。

④ 不動産は固定資産税資料だけでなく、登記情報で名義・共有持分・担保権等を確認します。

⑤ 株式・投資信託は証券会社からの資料だけでなく、ネット証券や非上場株式にも注意します。

⑥ 借金はローンだけでなく、保証債務・未払税金・施設費・事業債務等も確認します。

⑦ 相続放棄を検討する場合は、原則3か月という期限を意識して財産調査を急ぐことが重要です。

⑧ 調査した財産は財産目録にまとめてから、遺産分割等へ進むと整理しやすくなります。

相続財産調査の基本は 「あるものを探す」だけではありません
預貯金を確認

不動産を確認

株式・保険等を確認

借金・保証債務を確認


プラス財産とマイナス財産の 両方を確認して初めて、 相続財産の全体像が見えてきます。
相続財産の調査・相続人調査・遺産分割について
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川崎駅前通行政書士事務所
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