自筆証書遺言とは?
書き方・保管方法・無効にならないための注意点をわかりやすく解説
遺言書を作成しようと考えたとき、 最も身近な方法の一つが 「自筆証書遺言」 です。
紙と筆記具があれば自分で作成でき、 公証役場へ行かなくても作れるため、 比較的取り組みやすい遺言方法です。
一方で、 法律で定められた方式に違反すると 遺言書が無効となる可能性 があります。
② 日付を正確に記載する
③ 氏名を自書する
④ 押印する
⑤ 財産を誰に渡すのかを明確にする
⑥ 財産目録は一定の条件でパソコン等による作成も可能
⑦ 保管方法まで考える
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言とは、 遺言者本人が自ら作成する遺言書です。
民法で定められた方式に従って作成する必要があります。
- 遺言書の本文
- 作成日付
- 氏名
- 押印
自筆証書遺言のメリット
自分で作成できる
公証役場へ出向かず、 自宅などで作成できます。
費用を抑えやすい
自分だけで作成する場合には、 公証人手数料はかかりません。
内容を知られずに作成できる
自宅で作成する場合、 遺言内容を家族等に知られずに作成できます。
書き直しがしやすい
状況が変わったときに、 新たな遺言書を作成することができます。
自筆証書遺言のデメリット
方式不備のリスク
法律上必要な形式を満たしていないと、 無効となる可能性があります。
紛失の可能性
自宅保管では、 紛失・廃棄・発見されないリスクがあります。
内容が不明確になりやすい
財産の特定や表現が不十分だと、 解釈をめぐって問題になることがあります。
検認が必要な場合がある
自宅等で保管していた自筆証書遺言は、 原則として家庭裁判所の検認が必要です。
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言を作成する際には、 形式だけでなく内容も明確にすることが重要です。
誰が法定相続人なのかを確認します。
不動産・預貯金・株式等を整理します。
財産ごとに取得者を明確にします。
原則として本人が自筆で記載します。
法律上必要な形式を整えます。
財産の記載漏れ・曖昧な表現がないか確認します。
自宅保管または法務局保管制度などを検討します。
遺言書本文は自分で書く
自筆証書遺言では、 遺言書本文について 遺言者本人が自書すること が原則です。
財産目録はパソコンでも作成できる
現在は、 遺言書本文と一体となる 財産目録 については、 一定の要件を満たせば 自書でなくてもよいとされています。
- パソコンで作成した財産目録
- 不動産登記事項証明書の写し
- 預金通帳のコピー
財産目録を添付するときの注意
自書によらない財産目録を添付する場合には、 法律上の要件を守る必要があります。
用紙の両面に記載がある場合には、 各面について署名・押印が必要になるため注意が必要です。
日付は正確に書く
自筆証書遺言には、 作成日を記載する必要があります。
2026年9月12日
のように、 年月日を特定できる形で記載します。
のように、 日付を特定できない記載は避ける必要があります。
氏名を書く
遺言者本人が、 自分の氏名を自書します。
後から誰の遺言書なのか疑義が生じないよう、 戸籍上の氏名を正確に記載することが望ましいです。
押印も必要
自筆証書遺言には、 遺言者本人の押印が必要です。
不動産は正確に記載する
遺言書に不動産を記載する場合には、 単に 「自宅を長男に相続させる」 だけではなく、 どの不動産なのかを正確に特定できるようにすることが重要です。
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
- 所在
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
預貯金もできるだけ特定する
預貯金についても、 どの銀行口座を指しているのか 分かるように記載することが重要です。
○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
のように特定しておくと、 後の相続手続きを進めやすくなります。
「全財産を○○に相続させる」でもよい?
遺言内容によっては、 「私の全財産を長男○○に相続させる」 という書き方をする場合もあります。
ただし、 相続人の構成や財産内容によっては、 遺留分の問題なども生じます。
遺留分にも注意する
遺言書があれば、 原則として遺言者の意思に沿って 財産を承継させることができます。
しかし、 一定の相続人には 遺留分 が認められています。
- 配偶者
- 子などの直系卑属
- 父母などの直系尊属
夫婦で1通の遺言書を作ってよい?
いわゆる 共同遺言は禁止 されています。
夫婦それぞれが遺言を残したい場合には、 それぞれ別々の遺言書を作成します。
訂正方法にもルールがある
自筆証書遺言を書いている途中で 誤字や内容の変更が生じることがあります。
遺言書の訂正・加除変更には、 法律上の方式があります。
訂正箇所が多い場合には、 新しく最初から書き直す方が 安全なこともあります。
鉛筆で書いてもよい?
法律上、 筆記具について細かな指定があるわけではありません。
しかし、 消去・改ざんされる可能性を考えると、 容易に消せる鉛筆等は避け、 消えにくい筆記具 を使用することが望ましいです。
遺言書は何枚になってもよい?
遺言書が複数枚になること自体はあります。
ただし、 ページの差替えや紛失などの疑いが生じないよう、 一体の遺言書であることが分かる形で作成・保管することが重要です。
自宅で保管する場合
自筆証書遺言は、 自宅で保管することもできます。
- 金庫
- 鍵付きの書類保管場所
- 信頼できる家族への保管依頼
- 専門家への保管相談
自宅保管のリスク
発見されない
遺言書の存在を誰も知らず、 相続手続きが進んでしまう可能性があります。
紛失する
引越しや片付けの際に 紛失する可能性があります。
誤って廃棄される
重要書類と認識されず、 処分される可能性があります。
改ざん等の疑い
相続人間で、 遺言書の保管状況が問題になることがあります。
法務局の自筆証書遺言書保管制度
自筆証書遺言には、 法務局で遺言書を保管してもらう 自筆証書遺言書保管制度 があります。
改ざん・破棄のリスクを抑えられる
相続開始後に遺言書の存在を確認しやすい
家庭裁判所の検認が不要
法務局に預ければ内容まで保証される?
法務局の保管制度は、 遺言書を安全に保管するうえで有用ですが、 財産の記載内容や遺留分、 相続関係まで全面的に審査する制度ではありません。
自宅保管の遺言書には「検認」が必要
自宅等で保管していた自筆証書遺言は、 原則として、 相続開始後に家庭裁判所で 検認 の手続きを行います。
検認をすれば有効になる?
検認を受けた遺言書でも、 方式違反や内容上の問題があれば、 有効性が争われる可能性があります。
封印された遺言書を勝手に開けない
封印されている遺言書を発見した場合には、 家庭裁判所での手続き前に 自己判断で開封しないことが重要です。
遺言執行者を指定する
遺言書には、 遺言執行者 を指定しておくこともできます。
遺言執行者は、 遺言内容を実現するために 必要な手続きを行う役割を担います。
- 預貯金の相続手続き
- 遺言内容に基づく財産承継手続き
- 関係者への通知
- その他、遺言執行に必要な手続き
遺言書に書いておいた方がよい内容
- 誰に何を相続させるか
- 不動産の取得者
- 預貯金の取得者
- 株式・投資信託等の取得者
- その他の財産の扱い
- 遺言執行者
- 必要に応じて付言事項
付言事項とは?
付言事項とは、 財産の分け方そのものではなく、 遺言者の気持ちや 家族へのメッセージなどを書く部分です。
「長男に自宅を相続させるのは、 長年同居して介護をしてくれたことを考慮したためです」
など、 遺言内容の理由を伝えることができます。
付言事項そのものに 財産処分と同じ法的効力があるわけではありませんが、 相続人へ本人の思いを伝える意味があります。
自筆証書遺言が無効になりやすい主なケース
① 本文をパソコンで作成
自筆証書遺言の本文は、 原則として本人の自書が必要です。
② 日付が不明確
年月日を特定できない記載は問題になります。
③ 署名がない
遺言者本人の氏名の記載が必要です。
④ 押印がない
押印を忘れると方式上の問題になります。
⑤ 夫婦で1通を作成
共同遺言は禁止されています。
⑥ 訂正方法を誤る
加除変更には法律上の方式があります。
⑦ 財産が特定できない
どの土地・口座なのか分からないと、 相続手続きが難しくなります。
⑧ 本人の意思能力に問題
作成時に遺言内容を理解できる能力があったかが問題になることがあります。
認知症になったら遺言書は作れない?
認知症という診断名があるからといって、 それだけで直ちに遺言書を作成できないと 決まるわけではありません。
重要なのは、 遺言書を作成する時点で、 遺言内容とその結果を理解できる能力があるか という点です。
心配がある場合には、 公正証書遺言も含めて慎重に検討することが重要です。
公正証書遺言との違い
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 本人が原則として自書 | 公証人が関与して作成 |
| 費用 | 自分で作れば比較的少ない | 公証人手数料等が必要 |
| 証人 | 原則不要 | 原則2名必要 |
| 保管 | 自宅または法務局 | 原本を公証役場で保管 |
| 検認 | 自宅保管は原則必要、法務局保管は不要 | 不要 |
| 方式不備のリスク | 比較的高い | 公証人が関与するため抑えやすい |
自筆証書遺言が向いている人
- 財産関係が比較的単純
- 相続人が少ない
- 遺留分問題が少ない
- 内容を自分で整理できる
- 費用を抑えたい
- 法務局保管制度を利用したい
公正証書遺言を検討した方がよいケース
- 不動産が複数ある
- 相続人が多い
- 子どものいない夫婦
- 前婚の子がいる
- 相続人以外へ財産を渡したい
- 家族関係が複雑
- 遺留分が問題になりそう
- 遺言の有効性について後の争いが心配
遺言書は一度作ったら変更できない?
遺言は、 本人が存命中で遺言能力がある限り、 新しい遺言を作成して 内容を変更・撤回することができます。
一度遺言を作成した後も、 数年ごとや大きな環境変化の際に見直す ことをおすすめします。
自筆証書遺言を作る前のチェックリスト
- 法定相続人を確認した
- 相続財産を一覧にした
- 不動産登記事項証明書を確認した
- 預貯金を確認した
- 誰に何を相続させるか決めた
- 遺留分を確認した
- 本文を自書した
- 日付を正確に記載した
- 氏名を自書した
- 押印した
- 財産目録の署名・押印を確認した
- 遺言執行者を検討した
- 保管方法を決めた
行政書士に相談できること
自筆証書遺言は自分だけでも作成できますが、 方式だけでなく、 相続人・財産・遺留分等を整理したうえで 作成することが重要です。
- 相続人関係の確認
- 戸籍等の収集
- 相続関係の整理
- 財産資料の整理
- 財産目録の作成支援
- 自筆証書遺言の文案作成支援
- 遺言内容の整理
- 法務局保管制度利用に向けた準備
- 公正証書遺言を選択する場合の文案整理
- 遺言執行者の検討
遺言作成サポート料金
| サポート内容 | 料金(税別) |
|---|---|
| 自筆証書遺言サポート | 50,000円〜 |
| 公正証書遺言サポート | 70,000円〜 |
相続人の人数、 財産の種類・数、 内容の複雑さなどによって 料金が変わる場合があります。
公正証書遺言の場合は、 公証人手数料、 戸籍・登記事項証明書等の実費が 別途必要となります。
不動産の相続登記申請代理は司法書士、 相続税・贈与税などの税務相談は税理士の専門分野です。
まとめ
① 自筆証書遺言は、本人が自ら作成する遺言方法です。
② 本文・日付・氏名は、法律上の方式に従って作成する必要があります。
③ 財産目録は一定の要件のもとでパソコン等による作成も可能です。
④ 自書しない財産目録には、各ページへの署名・押印が必要です。
⑤ 自宅保管の場合は、紛失・廃棄・未発見のリスクがあります。
⑥ 法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すると、検認が不要になります。
⑦ 法務局で保管しても、遺言内容の法的有効性まで保証されるわけではありません。
⑧ 家族関係や財産内容が複雑な場合には、公正証書遺言も含めて検討することが大切です。
↓
財産調査
↓
遺留分確認
↓
遺言内容を決める
↓
法律上の方式に従って作成
↓
遺言執行者を検討
↓
安全に保管
将来、 遺言内容を確実に実現できるよう、 作成方法だけでなく 保管・相続手続きまで考えておくことが大切です。
お気軽にご相談ください
「財産をどのように記載すればよいか分からない」
「法務局の保管制度を利用したい」
「自筆証書と公正証書のどちらがよいか相談したい」
といった段階からご相談いただけます。
公正証書遺言サポート 70,000円〜(税別)
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