
認知症や要介護度が高くなっても住み続けられる?
サ高住の「退去条件」と将来の安心
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への入居を検討するとき、 現在の家賃やサービス内容と同じくらい重要なのが、 「将来、介護が必要になったときにも住み続けられるのか」 という問題です。
入居時には元気だった方でも、 数年後には要介護度が上がったり、 認知症が進行したり、 医療的なケアが必要になったりする可能性があります。
そこで気になるのが、
「認知症になったら追い出される?」
「寝たきりになっても生活できる?」
「入院が長引いた場合はどうなる?」
「最期まで看取ってもらえる?」
といった問題です。
しかし、
「サ高住だから一生住み続けられる」 というわけでもありません。
実際に住み続けられるかどうかは、 その住宅の契約内容、介護・看護体制、 医療対応、本人の状態などによって異なります。
そもそもサ高住は「介護施設」とは限りません
サ高住は、基本的には 高齢者が安心して暮らすための「住まい」です。
登録制度上、基本となるサービスは、 安否確認と生活相談です。
一般的なサ高住では、 介護が必要になった場合に、 訪問介護・訪問看護・デイサービスなどを 利用しながら生活することになります。
一方、サ高住の中には 「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、 介護付き有料老人ホームに近い介護サービスを 提供するタイプもあります。
入居前に、 「現在住めるか」だけでなく 「将来どこまで対応できるか」 を確認することが大切です。
要介護度が高くなったら退去になる?
「要介護3になったら退去」 「要介護5になったら必ず退去」 というように、 要介護度だけで一律に判断できるものではありません。
重要なのは、 その住宅で本人に必要な介護・生活支援を 安全に提供できるかどうかです。
比較的住み続けやすいケース
訪問介護・訪問看護等を利用することで 必要な支援が確保でき、 住宅側の対応範囲内で生活できる場合です。
住み続けることが難しくなるケース
常時の介護・医療的対応などが必要となり、 その住宅の設備・人員・サービスでは 安全な生活を維持できない場合などです。
認知症になったら退去しなければならない?
認知症についても、 診断を受けたことだけを理由に、 直ちに退去となるとは限りません。
軽度の認知症で、 介護サービスや家族等の支援を利用しながら 安全に生活できる場合には、 そのまま暮らせる住宅もあります。
一方、認知症が進行すると、 次のような問題が生じる場合があります。
- 建物外へ出て戻れなくなる
- 火の不始末など安全上の問題が生じる
- 服薬管理が難しくなる
- 排泄や食事に常時介助が必要になる
- 夜間の見守りが必要になる
- 他の入居者とのトラブルが生じる
- 本人自身の安全を確保することが難しくなる
住宅側で対応できる範囲を超えた場合には、 より介護体制の整った施設への住み替えを 検討する必要が生じることがあります。
医療が必要になった場合は?
高齢になると、 介護だけでなく医療への対応も重要になります。
- インスリン注射
- 胃ろう等の経管栄養
- たん吸引
- 在宅酸素
- 人工透析への通院
- 褥瘡の処置
- 終末期の医療
どこまで対応できるかは、 看護師の配置、訪問看護との連携、 協力医療機関、夜間体制などによって異なります。
日中だけなのか、夜間も対応できるのか、 どの医療行為に対応できるのかまで確認しましょう。
サ高住で「看取り」までできる?
サ高住の中には、 訪問診療・訪問看護・介護事業者等と連携し、 本人の希望や状態に応じて 看取りに対応している住宅もあります。
一方で、すべてのサ高住が 看取りまで対応しているわけではありません。
- 看取りの実績があるか
- 訪問診療を受けられるか
- 訪問看護を利用できるか
- 夜間の急変に誰が対応するか
- 終末期になっても居室で生活できるか
- 家族の希望をどのように確認するか
サ高住ではどんな場合に退去が問題になる?
実際の退去条件は 入居契約書等によって異なります。
一般に確認しておきたいのは、 次のようなケースです。
| ケース | 確認したいポイント |
|---|---|
| 家賃等の滞納 | 滞納した場合の催告や契約解除に関する規定 |
| 長期入院 | 入院が長期化した場合にも契約を継続できるか |
| 認知症の進行 | どのような状態まで対応できるか |
| 要介護度の上昇 | 重度介護になった場合の支援体制 |
| 医療依存度の上昇 | 必要な医療的ケアに対応できるか |
| 共同生活上の問題 | 他の入居者等への重大な迷惑行為などに関する規定 |
| 本人の安全確保が困難 | 住宅の人員・設備で安全な生活を維持できるか |
具体的にどのような場合に、 どのような手続きを経て契約終了となるのかを 確認することが重要です。
施設側から「明日までに退去してください」と言われる?
サ高住は「住まい」であり、 入居者の居住の安定に配慮した制度となっています。
そのため、事業者側が自由に、 何の手続きもなく入居者を退去させられる、 というものではありません。
特に実際の契約解除をめぐって争いがある場合には、 契約書だけでなく具体的な事情を踏まえ、 必要に応じて弁護士等へ相談することも重要です。
長期入院したら居室を失う?
高齢者の場合、 骨折や肺炎などをきっかけに 長期間入院することがあります。
その場合、
- 入院中も家賃等が発生するのか
- 食費は停止できるのか
- 生活支援サービス費はどうなるのか
- 何か月まで居室を確保できるのか
- 退院後に戻ることができるのか
- 入院によって身体状況が変わった場合に再入居できるのか
などを確認しておく必要があります。
退院後の受入れ条件まで確認しておくことが重要です。
入居前に「契約書」と「重要事項」を確認する
見学時には、 部屋の広さや食事、雰囲気に目が向きがちです。
しかし、将来の安心を考えるなら、 契約条件やサービス内容の確認が非常に重要です。
- 事業者から契約を解除できる場合
- 認知症が進行した場合の対応
- 要介護度が高くなった場合の対応
- 夜間の介護・見守り体制
- 医療的ケアへの対応
- 長期入院時の取扱い
- 看取りへの対応
- 退去を求める場合の手続き
- 退去時の費用精算
- 敷金・前払い金等の返還
見学時にはこう質問してみましょう
「認知症でも大丈夫ですか?」 だけでは、 十分な回答を得られない場合があります。
もう一歩具体的に質問するのがおすすめです。
「認知症が進行した場合、どの程度までこちらで生活できますか?」
「要介護5になった方が現在生活していますか?」
「夜間に介護が必要になった場合、誰が対応しますか?」
「医療的ケアが必要になった場合、どこまで対応できますか?」
「これまで、介護度の上昇などを理由に住み替えが必要になったのは、どのようなケースですか?」
「最期までこの居室で生活することはできますか?看取りの実績はありますか?」
サ高住と介護付き有料老人ホーム、どちらが安心?
これは本人の状態によって変わります。
| 比較 | 一般的なサ高住 | 介護付き有料老人ホーム |
|---|---|---|
| 基本的な性格 | 高齢者向け住宅 | 介護サービスを提供する高齢者向け施設 |
| 生活の自由度 | 比較的高い傾向 | 施設ごとの生活ルールによる |
| 介護 | 外部サービスを利用するタイプが多い | 施設による介護サービスが基本 |
| 重度介護 | 住宅ごとの差が大きい | 対応する施設が多いが、施設ごとに確認が必要 |
| 医療・看取り | 住宅ごとの差が大きい | 施設ごとの差があるため個別確認が必要 |
したがって、 「サ高住だから安心」 「介護付きだから必ず最期まで住める」 と名称だけで判断することはできません。
将来、別の施設へ住み替える可能性も考えておく
高齢者住宅を選ぶ際には、 「ここを終の住処にする」 という考え方だけでなく、 身体状況に応じて住み替える可能性も 考えておくと安心です。
比較的元気な時期
サ高住などで、 自由度の高い生活を続ける。
介護量が増えた時期
訪問介護や訪問看護等を増やし、 現在の住まいで生活できるか検討する。
重度介護になった時期
必要に応じて、 介護体制のより充実した施設への 住み替えを検討する。
終末期
本人の希望、医療・介護体制を踏まえ、 看取りの場所について検討する。
認知症が進む前に考えておきたい「契約と財産管理」
もう一つ重要なのが、 本人の判断能力です。
認知症が進行すると、 新しい施設への入居契約、 自宅の売却、 預貯金の管理などについて 本人だけで手続きを行うことが難しくなる場合があります。
- 見守り契約
- 財産管理等委任契約
- 任意後見契約
- 遺言書
- 死後事務委任契約
- 自宅を将来どうするかの方針
入居前の「将来も住める?」チェックリスト
- 認知症が進行しても対応できるか
- 要介護4・5になっても対応できるか
- 夜間に介護職員等がいるか
- 看護師は何時から何時までいるか
- 訪問診療を利用できるか
- 訪問看護を利用できるか
- 医療的ケアはどこまで対応できるか
- 長期入院後に戻れるか
- 看取りに対応しているか
- 事業者側からの契約解除条件は何か
- 退去を求める場合の手続きはどうなっているか
- 住み替えが必要になった場合に相談できるか
まとめ
① 要介護度が上がっただけで当然に退去になるわけではありません
実際に必要な介護と住宅の対応体制を確認します。
② 認知症も病名だけで判断できません
認知症の程度や必要な見守り・介護などによって異なります。
③ サ高住ごとに介護・医療体制が大きく異なります
「サ高住」という名称だけで判断しないことが重要です。
④ 医療・夜間対応・看取りまで確認します
現在必要なくても将来必要になる可能性があります。
⑤ 契約書の退去・解除条件を確認します
どのような場合に契約終了となるのかを入居前に確認しましょう。
⑥ 認知症が進む前に将来の手続きを考えます
任意後見、財産管理、自宅の処分方針なども早めの検討が大切です。
① 認知症が進んだらどうなるか
② 要介護5になったらどうなるか
③ 夜間介護が必要になったらどうなるか
④ 医療が必要になったらどうなるか
⑤ 長期入院したら戻れるか
⑥ 最期まで住めるのか
⑦ 退去が必要になった場合、次の住まいをどうするか
まで確認することです。
現在の快適さと同時に、 5年後・10年後の生活まで考えて選ぶことが 「将来の安心」につながります。
入居後の将来についてお気軽にご相談ください。
見守り・財産管理等委任・任意後見・遺言・相続など、
将来に向けた準備についてもご相談いただけます。