賃貸借契約の「連帯保証人・保証会社」とは?
責任の範囲と契約書で確認すべきポイント

賃貸借契約では、 借主が賃料を支払えなくなった場合などに備えて、 連帯保証人を付けたり、 家賃保証会社を利用したりすることがあります。

住宅賃貸だけでなく、 店舗・事務所などの事業用賃貸借でも、 保証の仕組みは非常に重要です。

ただし、 「連帯保証人を付けておけば安心」 「保証会社に入っていれば何でも保証される」 というわけではありません。

誰が、どこまで、いつまで責任を負うのか を契約書と保証契約で確認することが重要です。

保証で確認したい5つのポイント
① 誰が保証するのか

② 何を保証するのか

③ 保証の上限はいくらか

④ いつまで保証するのか

⑤ 更新・再契約時も保証が続くのか

「連帯保証人」とは?

連帯保証人とは、 借主が賃貸借契約上の債務を履行しない場合に、 借主とともに責任を負う保証人です。

通常の保証人よりも責任が重く、 貸主から請求を受けた場合に、 一定の範囲で支払義務を負うことがあります。

賃貸借契約の連帯保証では、 賃料だけでなく、 契約内容によっては原状回復費用や損害金なども 保証の対象となることがあります。

連帯保証人の責任は「賃料だけ」ではない

保証契約の内容によっては、 連帯保証人の責任は未払賃料だけに限られません。

例えば、
  • 未払賃料
  • 未払共益費・管理費
  • 遅延損害金
  • 借主負担の原状回復費
  • 契約違反に基づく損害賠償債務
  • 明渡しまでに発生する一定の債務
などが保証対象となるよう定められている場合があります。
実際にどこまで保証されるかは、 賃貸借契約書・連帯保証条項・保証契約の内容によって異なります。

「連帯保証」と普通の「保証」の違い

一般的な保証契約と連帯保証では、 保証人の責任に違いがあります。

項目 通常の保証 連帯保証
借主へ先に請求するよう求める 一定の場合に主張できることがある 原則として主張できない
借主の財産から先に回収するよう求める 一定の場合に主張できることがある 原則として主張できない
責任の程度 保証契約の範囲 借主と近い重い責任を負う

個人の連帯保証人には「極度額」が重要

賃貸借契約のように、 将来継続的に発生する債務を個人が保証する場合には、 個人根保証 に該当することがあります。

この場合、 保証人が負担する責任の上限として 「極度額」 を定めることが非常に重要です。

個人を根保証人とする契約では、 極度額を定めなければ保証契約が効力を生じない場合があります。

そのため、 「借主の一切の債務を保証する」 という記載だけでは不十分なことがあります。

極度額とは?

極度額とは、 保証人が負担する 保証債務の上限額 です。

例えば
極度額 300万円

と定めた場合、 保証人が負担する保証債務には 原則としてこの上限が設定されます。

実際に極度額をいくらに設定するかについては、 賃料額、契約期間、用途、保証対象債務などを考えて決めます。

「賃料○か月分」と書けばよい?

極度額について、 「賃料○か月分」といった表現を考える場合があります。

後から金額について争いが生じないよう、 契約締結時点で金額が明確になる形で定めることが重要です。

契約書では、 例えば 「極度額 金○○円」 のように具体的な金額を明記する方法が分かりやすいでしょう。

法人が保証人の場合は?

連帯保証人が個人ではなく法人の場合には、 個人根保証とは扱いが異なります。

ただし、 法人保証であっても、 どの債務をどこまで保証するのかを 契約書で明確にしておくことが重要です。

個人保証か法人保証かによって、 確認すべきルールが異なることがあります。

借主が法人の場合、代表者を連帯保証人にするケース

店舗・事務所の賃貸借では、 借主が法人で、 その法人の代表者個人を 連帯保証人とする場合があります。

例
借主:株式会社○○
連帯保証人:代表取締役○○○○


という形です。

この場合、 会社と代表者個人は別人格ですので、 法人の署名・押印だけでなく、 保証人本人としての意思確認 も重要です。

代表者が交代したら保証人も自動で変わる?

法人借主の代表取締役が交代しても、 連帯保証人が当然に新代表者へ入れ替わるわけではありません。

「会社代表者が連帯保証人」 という契約で代表者が交代した場合、 誰が保証人なのかを改めて確認する必要があります。

新代表者を保証人とするのであれば、 新たな保証契約や契約変更等が必要になる場合があります。

連帯保証人の本人確認も重要

保証契約を締結する際には、 保証人本人が契約内容を理解し、 実際に保証する意思があることを確認することが大切です。

確認する事項として、
  • 氏名
  • 住所
  • 生年月日等
  • 本人確認書類
  • 連絡先
  • 保証意思
  • 極度額
  • 保証対象となる契約
などがあります。

保証会社とは?

保証会社とは、 借主が賃料等を支払えない場合に、 保証契約の範囲内で貸主へ支払いを行う会社です。

近年は住宅だけでなく、 店舗・事務所などの事業用賃貸借でも 保証会社を利用するケースがあります。

連帯保証人

親族・代表者等の個人や法人が、 契約に基づいて保証責任を負います。

保証会社

保証会社との保証委託契約・保証契約に基づいて、 一定範囲の債務を保証します。

保証会社なら何でも保証される?

保証会社を利用していても、 貸主に発生した損失が すべて保証されるとは限りません。

保証範囲は保証会社・保証商品によって異なります。
確認したい内容として、
  • 未払賃料
  • 共益費・管理費
  • 更新料・再契約料
  • 原状回復費
  • 残置物処分費
  • 訴訟費用
  • 明渡し費用
  • 違約金
  • 保証限度額
  • 保証期間
などがあります。

保証会社を利用する場合の費用

保証会社を利用する場合には、 通常、 保証料等が必要になります。

例えば、
  • 初回保証料
  • 年間保証料
  • 更新保証料
  • 月額保証料
などがあります。

具体的な料金体系は保証会社や商品によって異なりますので、 利用前に確認します。

保証会社の審査

保証会社を利用する場合には、 通常、借主について審査があります。

事業用物件の場合には、 法人の業績や代表者、 事業内容などを確認されることがあります。

「保証会社を利用する予定だから、 必ず契約できる」 というわけではありません。

保証会社の審査と 貸主側の入居審査は別に行われることがあります。

保証会社+連帯保証人という契約もある

保証会社を利用する場合でも、 契約条件によっては 連帯保証人や代表者保証を求めることがあります。

保証の形は一つではありません
連帯保証人のみ

保証会社のみ

保証会社 + 連帯保証人

保証会社 + 法人代表者保証


など、 契約内容によって異なります。

保証会社を使うメリット

貸主側のメリット

一定範囲の賃料滞納リスクを 保証会社へ移転できる可能性があります。

借主側のメリット

親族等へ連帯保証を依頼しにくい場合でも、 契約しやすくなる可能性があります。

保証会社利用時の注意点

  • 保証対象外の債務がないか
  • 保証限度額はいくらか
  • 保証期間はいつまでか
  • 更新手続きが必要か
  • 事故報告期限があるか
  • 滞納発生時の連絡方法
  • 立替払いの条件
  • 原状回復費等の請求手続き
  • 保証会社契約が解除される場合

滞納が発生したら保証会社へ早めに連絡

保証会社によっては、 賃料滞納が発生した場合に 一定期間内の事故報告を求めていることがあります。

保証会社に入っているからといって、 長期間何も連絡せずに放置しないことが重要です。

保証条件・報告期限は保証会社ごとに確認します。

保証会社が立替払いすると借主の債務はなくなる?

保証会社が貸主に対して立替払いを行っても、 借主の支払義務そのものが当然になくなるわけではありません。

保証会社が借主に対して 立替金等を請求することがあります。

保証会社は、借主の債務を無料で肩代わりする制度ではありません。

連帯保証人と保証会社の比較

項目 連帯保証人 保証会社
保証主体 個人・法人 保証会社
審査 貸主が確認 保証会社独自の審査あり
費用 通常、保証会社の保証料はなし 保証料等が発生
保証範囲 保証契約で決定 保証商品・約款で決定
保証限度 個人根保証では極度額が重要 保証会社ごとに上限あり
継続管理 保証人の住所・死亡・代表者変更等を確認 更新・保証料・事故報告等を確認

契約更新時の保証はどうなる?

普通借家契約を更新する場合には、 保証契約がどこまで継続するのかを確認する必要があります。

契約書や保証契約の内容によっては、 更新後も保証が継続することがありますが、 当然にすべて同じ条件で継続すると決めつけないことが重要です。

定期建物賃貸借の「再契約」は特に注意

定期建物賃貸借では、 期間満了により旧契約が終了し、 引き続き賃貸する場合には 新たな契約を締結する「再契約」となります。

旧契約の連帯保証人が、 新しい再契約についても当然に保証人になるとは限りません。

再契約時には、 保証人の意思を改めて確認し、 必要に応じて 新たな保証契約を締結することが重要です。

再契約では極度額も改めて確認

個人の連帯保証人について 新たに根保証契約を締結する場合には、 新契約に対応した 極度額 を確認します。

旧契約書の保証条項をそのままコピーするのではなく、 新しい賃料・契約期間・保証内容に合わせて 見直すことが重要です。

賃料を増額した場合

再契約や契約変更によって賃料を増額した場合には、 保証人・保証会社の保証範囲についても確認します。

特に保証会社の場合は、 賃料変更の届出や保証内容の変更が必要になる場合があります。

保証人が死亡した場合

個人の連帯保証人が契約期間中に死亡することもあります。

その場合の保証債務の扱いには、 保証契約の性質や具体的な事情が関係するため、 一律に考えないことが重要です。

保証人が死亡した場合は、 その後の保証体制について早めに確認しましょう。

保証人の住所・連絡先変更も管理

長期の賃貸借では、 保証人の住所や電話番号が変わることがあります。

契約書には、
  • 住所変更
  • 氏名変更
  • 連絡先変更
  • 法人保証人の商号・本店変更
などがあった場合の 通知義務を定めておくことも考えられます。

保証人を変更したい場合

借主が一方的に 連帯保証人を変更できるとは限りません。

新しい保証人について 貸主の承諾を必要とする旨を契約書で定めておく方法があります。

貸主側では、 新保証人の支払能力や本人確認等を確認したうえで 変更を検討します。

契約書で確認すべき連帯保証条項

  • 保証人の氏名・住所
  • 保証対象となる賃貸借契約
  • 保証する債務の範囲
  • 極度額
  • 保証期間
  • 更新時の取扱い
  • 再契約時の取扱い
  • 賃料変更時の取扱い
  • 保証人変更の手続き
  • 住所等変更時の通知義務

保証会社利用時に契約書で確認したいこと

  • 指定保証会社を利用すること
  • 保証会社の審査承認を条件とするか
  • 保証料を誰が負担するか
  • 保証契約を継続する義務
  • 保証会社から更新を求められた場合の対応
  • 保証契約が終了した場合の取扱い
  • 別の保証会社への切替え
  • 連帯保証人を追加する場合の条件

保証会社が使えなくなった場合

保証会社との保証契約が終了した場合や、 保証会社の利用条件を満たさなくなった場合に備え、 賃貸借契約書上の取扱いも考えておく必要があります。

例えば、

借主は貸主の指定する別の保証会社へ加入する

または

貸主が承認する連帯保証人を立てる

といった条項を検討することがあります。

保証金があれば保証人は不要?

高額な保証金を預かっている場合、 「保証人は不要ではないか」 と考えることがあります。

しかし、 保証金だけで十分かどうかは、 賃料額・保証金額・契約期間・用途・原状回復リスク等によって異なります。

保証は組み合わせて考える
保証金
+ 連帯保証人
+ 保証会社


を必ずすべて付ける必要があるわけではありませんが、 物件や借主の状況に応じて どの保証方法を採用するか検討します。

保証を厳しくしすぎないことも重要

貸主側としては保証を強くしたいところですが、 必要以上に保証条件を厳しくすると、 良好な借主の契約ハードルが高くなることもあります。

保証金額、 借主の信用力、 法人規模、 保証会社利用の有無などを踏まえて、 合理的な保証体制を設計することが重要です。

連帯保証人・保証会社でよくあるトラブル

① 極度額が書かれていない

個人根保証で極度額が問題となり、 保証の効力に影響する可能性があります。

② 保証範囲が曖昧

原状回復費や違約金まで保証されるのか不明確になります。

③ 再契約で保証を取り直していない

旧契約の保証人が新契約も当然に保証すると考えてしまいます。

④ 保証会社の保証範囲を誤解

原状回復費などがすべて保証されると思い込んでしまいます。

⑤ 事故報告が遅れた

保証会社所定の期限・手続きを確認していなかったケースです。

⑥ 代表者交代を放置

法人借主の代表者変更後も保証関係を確認していない場合があります。

契約締結前チェックリスト

  • 連帯保証人を付けるか決めた
  • 保証会社を利用するか決めた
  • 保証人が個人か法人か確認した
  • 個人根保証の極度額を確認した
  • 保証対象債務を明確にした
  • 保証人本人の意思を確認した
  • 保証会社の保証範囲を確認した
  • 保証会社の限度額を確認した
  • 保証料を確認した
  • 保証期間を確認した
  • 更新時の保証を確認した
  • 再契約時の保証を確認した
  • 保証人変更時の手続きを定めた
  • 保証会社契約終了時の対応を決めた

行政書士に相談できること

連帯保証人・保証会社に関する条項は、 単独で考えるのではなく、 賃料・保証金・原状回復・中途解約・違約金・再契約等と 整合するように契約書全体を作成すること が重要です。

行政書士は業務範囲に応じて、
  • 賃貸借契約書の作成
  • 連帯保証条項の作成・整理
  • 個人保証の極度額条項の確認
  • 法人保証条項の整理
  • 保証会社利用条項の整理
  • 保証人変更条項の作成
  • 定期建物賃貸借の再契約時の保証条項整理
  • 保証金・原状回復・中途解約条項との整合確認
  • 契約書全体の不足・矛盾の確認
などを行うことができます。
すでに賃料滞納等の具体的な紛争が発生し、 保証人・借主・保証会社との交渉や 訴訟対応が必要な場合には、 弁護士への相談が必要となることがあります。

また、 保証会社ごとの保証範囲・手続き・料金等は異なるため、 実際に利用する保証会社の最新の約款・契約条件を確認することが重要です。

まとめ

① 連帯保証人は、契約の範囲内で借主とともに重い保証責任を負います。

② 個人が継続的な賃貸借債務を保証する場合には、個人根保証の極度額が重要です。

③ 保証対象は、未払賃料だけでなく、契約によって原状回復費等が含まれる場合があります。

④ 保証会社を利用しても、すべての債務が当然に保証されるわけではありません。

⑤ 保証会社ごとに保証範囲・上限額・報告期限・保証料等を確認します。

⑥ 定期建物賃貸借の再契約では、旧契約の保証を当然に引き継げると考えないことが重要です。

⑦ 法人代表者が交代した場合も、連帯保証人の扱いを確認します。

⑧ 契約書では「誰が・何を・いくらまで・いつまで保証するか」を明確にすることが重要です。

保証トラブルを防ぐポイント
保証方法を決める
↓
保証人・保証会社を確認
↓
保証対象を明確化
↓
極度額・保証限度額を確認
↓
更新・再契約時の取扱いを確認
↓
保証終了時の代替手段を決める


契約締結時にここまで整理しておくことで、 賃料滞納や退去時のトラブルに備えやすくなります。
賃貸借契約書・連帯保証人・保証会社の条項について
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