宅建業を法人で開業するには?
会社設立・定款の事業目的・宅建業免許申請までの流れを解説

不動産会社を法人で設立し、 宅地・建物の売買や仲介などを事業として行う場合には、 会社を作るだけでは営業を始めることはできません。

会社設立 → 定款・事業目的 → 事務所 → 専任宅建士 → 宅建業免許 → 保証関係 といった準備を順番に進める必要があります。

特に注意したいのは、 会社設立後に宅建業免許の要件を検討するのではなく、 会社を作る前から免許取得を見据えて設計すること です。

法人で宅建業を始める基本的な流れ
事業計画
↓
会社形態を決める
↓
定款・事業目的を検討
↓
会社設立
↓
宅建業事務所を整備
↓
専任宅建士等を確保
↓
宅建業免許申請
↓
免許取得
↓
保証協会加入または営業保証金供託
↓
営業開始

まず、宅建業免許が必要な事業か確認

宅地建物取引業法上、 宅地・建物について一定の取引を 「業として」 行う場合には、 原則として宅建業免許が必要です。

代表的には、
  • 自ら宅地・建物を反復継続して売買する
  • 宅地・建物の売買・交換を代理する
  • 宅地・建物の売買・交換を媒介する
  • 宅地・建物の賃貸借を代理する
  • 宅地・建物の賃貸借を媒介する
などです。
自己所有物件を自ら賃貸するだけであれば、 通常は宅建業には該当しません。

一方、 他人の物件の賃貸借を代理・仲介する場合には、 宅建業免許が必要となるのが基本です。

法人で始めるか、個人で始めるか

宅建業は、 個人事業としても法人としても 免許を受けることができます。

法人で開業する場合には、 まず会社を設立し、 その法人名義で宅建業免許を申請 します。

法人で開業

株式会社・合同会社等を設立し、 その法人が宅建業免許を取得します。

個人で開業

個人本人が宅建業免許を取得し、 個人事業として営業します。

株式会社と合同会社、どちらでも宅建業はできる?

宅建業を法人で行う場合、 会社形態は株式会社に限られません。

代表的な選択肢
株式会社
合同会社


いずれも、 必要な要件を満たせば 宅建業免許を取得することが可能です。

ただし、 対外的な信用、設立コスト、 役員構成、将来の出資受入れなども考えて 会社形態を選択することが大切です。

会社設立前に「事業目的」を検討

法人で宅建業を行う場合、 定款および登記事項に 宅建業を行うことが分かる 事業目的 を入れておくことが重要です。

会社を先に設立し、 あとから宅建業の事業目的が入っていないことに気づくと、 定款変更や目的変更登記が必要になることがあります。

宅建業の事業目的はどう書く?

例えば、 定款の目的としては 次のような表現が考えられます。

・宅地建物取引業

または、

・不動産の売買、賃貸、管理及び仲介

などです。

実際には、 今後行う予定の事業内容を踏まえて 目的文言を整理します。

将来、 不動産管理、コンサルティング、 高齢者住宅関連など周辺事業を行う予定がある場合には、 会社設立時に将来の事業展開も考えて目的を設計することが重要です。

事業目的は広く書けばよい?

将来行う可能性のある事業を ある程度含めておくことは合理的ですが、 無関係な事業目的を大量に並べればよいというものでもありません。

会社の実際の事業内容と整合する、 分かりやすい事業目的にすることが大切です。

会社設立の基本事項を決める

法人設立時には、 事業目的だけでなく さまざまな事項を決めます。

  • 商号
  • 本店所在地
  • 会社形態
  • 事業目的
  • 資本金
  • 出資者
  • 役員
  • 事業年度
  • 公告方法等

本店所在地は宅建業事務所になることも考えて決める

会社設立時の本店所在地を、 そのまま宅建業の主たる事務所として使用するケースは多くあります。

その場合には、 会社登記ができるかだけでなく、 宅建業事務所として認められるか も確認しておく必要があります。

「法人登記可能」 と 「宅建業事務所として利用可能」 は同じではありません。

宅建業事務所の主な確認ポイント

  • 継続して宅建業を行える場所か
  • 自社専用の執務スペースがあるか
  • 他法人や居住部分との区分に問題がないか
  • 専任宅建士が常勤できるか
  • 事務設備を設置できるか
  • 標識等を掲示できるか
  • 賃貸借契約上、事務所使用が認められているか

自宅を本店・宅建業事務所にする場合

自宅を会社の本店所在地として登記し、 さらに宅建業事務所として使用したい場合には、 自宅内の事務所区画や出入口などを確認します。

自宅だから不可 と一律に決まるわけではありません。

ただし、 居住部分と事務所部分の区分や業務実態 が重要です。

レンタルオフィスの場合も事前確認

レンタルオフィスやシェアオフィスを 本店所在地として利用する場合にも注意が必要です。

会社登記ができるレンタルオフィスでも、 宅建業事務所として認められるとは限りません。

専用個室、独立性、継続利用、 専任宅建士の常勤可能性などを確認します。

資本金はいくら必要?

宅建業免許を受けるために、 法律上、 「資本金1,000万円以上でなければならない」 という一般的な最低資本金要件はありません。

ただし、 会社設立費用、 事務所賃料、 設備費、 人件費、 保証協会関係費用などが必要になります。

「免許上の最低資本金」 と 「実際に事業を続けるために必要な資金」 は別問題です。

開業後の運転資金まで含めて 資金計画を立てることが重要です。

役員についても確認

法人で宅建業免許を申請する場合、 代表取締役や取締役などについて 宅建業法上の欠格要件に該当しないことが必要です。

会社設立前に、
  • 代表者
  • 取締役等
  • 政令で定める使用人となる予定者
などについて、 宅建業免許上問題がないか確認しておくことが重要です。

代表者が常勤できない場合

代表者が宅建業事務所に常勤しない場合には、 事務所の運営体制によって 政令で定める使用人 を置く必要が生じる場合があります。

支店や営業所を設ける場合にも、 支店長・営業所長等の体制を確認します。

専任の宅地建物取引士を確保

宅建業免許で特に重要なのが、 専任の宅地建物取引士 です。

各事務所には、 法令上必要な人数の 成年者である専任宅建士を配置する必要があります。

人数の基本
宅建業に従事する者5人につき 1人以上

の割合で、 専任宅建士を置くことが基本です。

代表者自身が専任宅建士になることも可能

会社の代表者自身が宅建士資格を持ち、 その事務所に常勤し、 専任性を満たしている場合には、 代表者が専任宅建士を兼ねるケースもあります。

代表取締役 + 専任宅建士

という形は、 小規模な宅建業者では珍しくありません。

会社を設立したら宅建業免許を申請

会社設立登記が完了し、 事務所・専任宅建士等の要件が整ったら、 法人名義で宅建業免許を申請します。

申請では主に、
  • 法人情報
  • 役員情報
  • 事務所情報
  • 専任宅建士
  • 政令使用人等
  • 財務・納税関係
  • 欠格要件
などを確認します。

知事免許か大臣免許か

宅建業免許には、 都道府県知事免許と 国土交通大臣免許があります。

事務所の配置 免許区分
1つの都道府県内だけ 都道府県知事免許
2つ以上の都道府県 国土交通大臣免許
例えば、

神奈川県内だけに事務所 → 神奈川県知事免許

神奈川県と東京都に事務所 → 国土交通大臣免許

というのが基本です。

宅建業免許申請の主な必要書類

法人の新規免許申請では、 一般に次のような資料を準備します。

  • 宅地建物取引業免許申請書
  • 法人の履歴事項全部証明書
  • 定款
  • 役員等に関する書類
  • 専任宅建士関係書類
  • 政令で定める使用人関係書類
  • 事務所関係資料
  • 事務所写真
  • 従業者関係資料
  • 財務・納税関係資料
  • その他、申請先が求める資料
必要書類・様式・有効期限等は、 申請先行政庁の最新の手引きで確認することが重要です。

免許が出たらすぐ営業できる?

宅建業免許を受けたからといって、 直ちに営業開始できるとは限りません。

宅建業を開始するためには、 営業保証金または保証協会関係の手続きを行う必要があります。

「免許通知が届いた=その日から宅建業を開始できる」 と考えないよう注意が必要です。

営業保証金を供託する方法

宅建業者は、 法定の営業保証金を供託し、 必要な届出を行ったうえで 営業を開始する方法があります。

事務所数によって必要となる金額や手続きが異なるため、 開業前に確認しておきます。

保証協会に加入する方法

実務上は、 宅地建物取引業保証協会へ加入し、 弁済業務保証金分担金 等を納付する方法も広く利用されています。

保証協会を利用する場合には、
  • 加入申込み
  • 審査
  • 入会手続き
  • 弁済業務保証金分担金
  • 入会金・会費等
について確認します。

保証協会は会社設立前から検討

保証協会への加入には、 一定の手続きや審査期間がかかることがあります。

宅建業免許取得後に初めて調べるのではなく、 開業計画の段階から どの保証協会を利用するか検討しておくとスムーズです。

法人開業で必要となる主な費用

法人で宅建業を始める場合には、 免許申請だけでなく、 複数の費用を見込んでおく必要があります。

項目 主な内容
会社設立費用 定款、登録免許税、専門家報酬等
事務所費用 敷金・保証金、賃料、設備等
免許申請関係 申請手数料、証明書取得費等
保証関係 営業保証金または保証協会関係費用
人件費 専任宅建士、従業者等
開業後運転資金 賃料、広告費、システム費、通信費等

会社設立から営業開始までの流れ

STEP 1 宅建業の事業計画を作る
売買・賃貸仲介・買取再販など、どの事業を行うか整理します。
STEP 2 会社形態を決める
株式会社・合同会社等を検討します。
STEP 3 定款・事業目的を決める
宅建業を行える事業目的を設計します。
STEP 4 本店・事務所候補を確認
宅建業事務所の要件を満たせるか確認します。
STEP 5 役員・資本金等を決定
会社設立に必要な基本事項を決めます。
STEP 6 会社設立登記
法務局で法人設立登記を行います。
STEP 7 事務所を整備
机・設備・表示等を準備します。
STEP 8 専任宅建士等を配置
必要人数と常勤性・専任性を確認します。
STEP 9 宅建業免許申請
必要書類を揃えて申請します。
STEP 10 免許取得
免許番号等を確認します。
STEP 11 保証協会・営業保証金手続き
営業開始前に保証関係を整えます。
STEP 12 営業開始
必要な標識等を掲示し、営業体制を整えます。

会社設立前に特に確認したい5項目

① 事業目的

宅建業を行うための目的が適切に入っているか確認します。

② 本店・事務所

法人登記だけでなく宅建業事務所として使用できるか確認します。

③ 専任宅建士

開業時に必要な専任宅建士を確保できるか確認します。

④ 役員

宅建業法上の欠格要件に問題がないか確認します。

⑤ 開業資金

設立・免許・保証協会・事務所・運転資金をまとめて検討します。

⑥ 開業スケジュール

会社設立日だけでなく、実際に宅建業を開始できる時期から逆算します。

会社を作ったのに免許が取れない事態を防ぐ

宅建業を法人で開業するときに重要なのは、 会社設立と宅建業免許を別々に考えないこと です。

会社を設立した後に、

「事務所要件を満たしていなかった」
「専任宅建士が確保できなかった」
「定款の事業目的を変更する必要があった」

ということになると、 開業時期が大きく遅れる場合があります。

会社設立と宅建業免許を一つの工程として考える

おすすめの考え方
宅建業免許の要件を先に確認
↓
その要件を満たす形で会社を設計
↓
会社設立
↓
免許申請
↓
営業開始


この順番で考えることで、 手戻りを防ぎやすくなります。

開業前チェックリスト

  • 法人で宅建業を行うことを決めた
  • 株式会社・合同会社等を決めた
  • 定款の事業目的を確認した
  • 本店所在地を決めた
  • 宅建業事務所として使用できるか確認した
  • 代表者・役員を決めた
  • 役員等の欠格要件を確認した
  • 専任宅建士を確保した
  • 専任宅建士の常勤性・専任性を確認した
  • 必要な開業資金を確認した
  • 知事免許・大臣免許の区分を確認した
  • 保証協会加入または供託を検討した
  • 営業開始までのスケジュールを作成した

行政書士に相談できること

宅建業を法人で開業する場合には、 会社設立の準備段階から 宅建業免許を見据えて進めることが重要です。

行政書士は業務範囲に応じて、
  • 宅建業開業までの手続き整理
  • 定款・事業目的の作成支援
  • 会社設立に必要な書類作成支援
  • 宅建業事務所要件の確認
  • 専任宅建士の要件確認
  • 宅建業免許新規申請
  • 必要添付資料の収集・整理
  • 保証協会関係手続きの整理
  • 免許取得後の変更届・更新手続き
などを支援することができます。
会社設立に伴う法務局への商業登記申請代理は、 司法書士の業務です。

行政書士による定款・許認可関係の支援と、 司法書士による会社設立登記を 必要に応じて役割分担して進めることが重要です。

まとめ

① 法人で宅建業を開業する場合、会社設立だけでは営業できません。

② 会社設立前に、宅建業を行える定款・事業目的を検討します。

③ 本店所在地を宅建業事務所とする場合は、事務所要件を事前に確認します。

④ 事務所ごとに必要な専任宅建士を確保します。

⑤ 法人設立後、その法人名義で宅建業免許申請を行います。

⑥ 免許取得後も、営業保証金または保証協会関係の手続きが必要です。

⑦ 知事免許か大臣免許かは、宅建業事務所の所在地で判断します。

⑧ 会社設立・宅建業免許・保証関係を一つの開業工程として考えることが重要です。

宅建業の法人開業は「免許から逆算して会社を作る」
事業計画
↓
会社形態・事業目的
↓
本店・宅建業事務所
↓
役員・専任宅建士
↓
会社設立
↓
宅建業免許申請
↓
保証協会・営業保証金
↓
営業開始


この流れで準備することで、 開業時の手戻りを防ぎやすくなります。
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