相続人が多いときの相続手続きとは?
戸籍収集・連絡・遺産分割の進め方を解説
相続が発生したとき、 相続人が配偶者と子どもだけであれば、 比較的分かりやすく手続きを進められることがあります。
しかし、 兄弟姉妹や甥・姪まで相続人になる場合、 あるいは何代も前の相続がそのままになっている場合には、 相続人が10人、20人、それ以上 になることもあります。
相続人が多い相続では、 まず正確に相続人を確定し、 その全員に連絡を取り、 遺産分割について合意を得る必要があります。
② 相続人全員の連絡先を確認する
③ 相続財産を調査する
④ 相続人全員で遺産分割を協議する
⑤ 合意した内容を遺産分割協議書にまとめる
なぜ相続人が多くなるの?
相続人が多くなる主な理由として、 次のようなケースがあります。
兄弟姉妹が多い
被相続人に子や直系尊属がおらず、 兄弟姉妹が相続人になるケースです。
兄弟姉妹がすでに死亡
兄弟姉妹が先に亡くなっていると、 その子である甥・姪が代襲相続人となる場合があります。
相続登記を長年していない
祖父母や曾祖父母名義の不動産が残っていると、 世代を重ねるごとに相続人が増えることがあります。
再婚・前婚の子がいる
前の配偶者との間に子がいる場合も、 その子は相続人となる可能性があります。
最初にすることは「相続人の確定」
相続人が多い場合ほど、 最初に正確な相続人調査を行うことが重要です。
「家族が知っている人だけ」 「普段付き合いがある人だけ」 で遺産分割を進めることはできません。
戸籍はどこまで集める?
通常、亡くなった方について、 出生から死亡までの連続した戸籍等を確認します。
- 現在戸籍
- 除籍謄本
- 改製原戸籍
- 転籍前の戸籍
- 必要に応じて相続人側の戸籍
戸籍をたどることで、 婚姻歴、離婚歴、子の有無、 養子縁組、兄弟姉妹などを確認していきます。
古い戸籍では相続人調査が複雑になる
相続開始から長期間が経過している場合や、 兄弟姉妹・甥姪相続の場合には、 多くの戸籍を取得する必要があります。
被相続人
↓ 父母
↓ 兄弟姉妹
↓ 死亡している兄弟姉妹
↓ その子である甥・姪
というように、 戸籍を何世代にもわたって確認することがあります。
法定相続人の順位
| 順位 | 相続人 | 主なポイント |
|---|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 | 他の順位の相続人と一緒に相続人となります。 |
| 第1順位 | 子 | 子が先に死亡している場合は、孫などが代襲相続することがあります。 |
| 第2順位 | 父母・祖父母等 | 子等がいない場合に相続人となります。 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 兄弟姉妹が先に死亡している場合は、その子である甥・姪が代襲相続することがあります。 |
相続人が判明したら連絡先を確認する
戸籍上の相続人が分かっても、 すぐに連絡が取れるとは限りません。
- 長年交流がない人
- 住所を知らない人
- 遠方に住んでいる人
- 海外に住んでいる人
- 家族も連絡先を知らない人
住所が分からない相続人はどうする?
戸籍等から本籍を確認し、 必要に応じて戸籍の附票などを取得することで、 現在の住所を確認できる場合があります。
ただし、 取得できる人や請求理由には法律上のルールがあります。
相続人への最初の連絡は慎重に
長年交流のない親族へ突然、
「この書類に印鑑を押してください」
とだけ連絡すると、 警戒されたり、 相続人間の関係が悪くなることがあります。
最初の連絡では、 相続が発生した経緯と、 なぜその人が相続人になるのかを 分かりやすく説明することが重要です。
相続人への連絡で伝えたい内容
- 誰が亡くなったのか
- いつ亡くなったのか
- 自分との関係
- 連絡した理由
- 相続人として確認された経緯
- 現在把握している相続財産
- 今後予定している手続き
- 急いで判断を求めるものではないこと
相続財産の調査も同時に進める
相続人を確定するだけでは、 遺産分割を進めることはできません。
何を分けるのかを確認するため、 相続財産の調査も必要です。
預貯金
銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行などの残高を確認します。
不動産
土地・建物・私道持分等を確認します。
株式・投資信託
証券会社や金融機関の取引状況を確認します。
負債
借入金、未払金、保証債務等も確認します。
相続人が多いほど「財産一覧」が重要
相続人が多数いる場合には、 各人が異なる情報を持っていることがあります。
そのため、 相続財産を一覧にして共有できるようにしておくことが重要です。
財産の漏れを防ぎやすい
遺産分割協議を進めやすい
「聞いていない」というトラブルを防ぎやすい
遺産分割協議は相続人全員で行う
遺言書がなく、 法定相続分と異なる分け方をする場合には、 原則として相続人全員で遺産分割協議を行います。
原則として、 相続人全員の合意が必要です。
全員が一か所に集まる必要はある?
相続人全員が同じ場所に集まって、 一度に話し合う必要があるとは限りません。
重要なのは、 最終的な遺産分割の内容について全員の合意があること です。
遺産分割協議書を作成する
相続人全員の合意が成立したら、 その内容を 遺産分割協議書 として書面にします。
- 被相続人の表示
- 相続人の表示
- 不動産を誰が取得するか
- 預貯金を誰が取得するか
- その他の財産の分け方
- 相続人全員の署名・押印等
相続人が多いと印鑑証明書も多くなる
遺産分割協議書を銀行手続きや 不動産相続登記などに使用する場合、 実務上、 相続人全員の印鑑証明書等が必要になることがあります。
相続人が多いほど、 書類の回収にも時間がかかります。
遺産分割協議書を何通作る?
相続人が多い場合、 同じ遺産分割協議書に全員が署名押印する方法だけでなく、 手続きの内容によっては 同一内容の証明書類を各相続人から取得する方法なども検討されます。
どの形式が適切かは、 提出先や手続き内容に応じて確認します。
法定相続情報一覧図を活用する
相続人が多い場合、 戸籍の束を何度も銀行や法務局へ提出するのは大変です。
そこで便利なのが 法定相続情報証明制度 です。
認証された写しを、 各種相続手続きで戸籍一式の代わりとして 利用できる場合があります。
相続人の一人が連絡に応じない場合
相続人が多いと、 連絡しても返事が来ない人がいることがあります。
まずは、 書面を送る、 連絡方法を変える、 十分な説明をするなどの対応を行います。
それでも協議が進まない場合には、 家庭裁判所での遺産分割調停等が必要となることがあります。
相続人の行方が分からない場合
住所を調べても所在が分からず、 長期間連絡が取れない相続人がいる場合があります。
この場合、 単にその人を除外して遺産分割することはできません。
相続人に未成年者がいる場合
相続人の中に未成年者がいる場合には、 親権者が法定代理人として手続きすることがあります。
しかし、 親と未成年の子が同じ相続の相続人となり、 利益が対立するような場合には注意が必要です。
認知症などで判断能力に問題がある相続人がいる場合
相続人の中に、 認知症等によって遺産分割の内容を十分理解・判断できない人がいる場合には、 単に家族が代わりに署名することはできません。
遺産分割は重要な法律行為ですので、 本人の判断能力を確認しながら進める必要があります。
海外在住の相続人がいる場合
相続人が海外に住んでいる場合でも、 その人を除外することはできません。
日本の印鑑証明書を取得できないケースでは、 居住国の制度に応じて 署名証明等を利用することがあります。
相続人が亡くなってしまった場合
遺産分割が終わる前に相続人の一人が亡くなると、 その相続人の相続人が権利を引き継ぐことがあります。
いわゆる 数次相続 となり、 関係者がさらに増えることがあります。
不動産がある場合は特に早めの対応を
相続人が多い相続で不動産が含まれている場合には、 さらに注意が必要です。
- 誰が取得するのか
- 売却するのか
- 共有にするのか
- 代償金を支払うのか
- 固定資産税を誰が負担するのか
- 建物を誰が管理するのか
また、 相続登記は2024年4月1日から義務化されていますので、 期限についても確認が必要です。
共有名義にすれば簡単?
遺産分割がまとまらない場合、 とりあえず複数の相続人で共有にすることを考えることがあります。
しかし、 相続人が多い不動産を多数の共有名義にすると、 将来的な売却や管理が難しくなることがあります。
不動産については、 将来の利用・売却・管理まで考えたうえで、 遺産分割方法を検討することが重要です。
相続人が多い場合の一般的な進め方
公正証書遺言、自筆証書遺言などがないか確認します。
被相続人の出生から死亡までの戸籍等を集めます。
配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹、甥姪等を確認します。
疎遠な相続人を含め、連絡できる状態にします。
預貯金、不動産、有価証券、債務等を整理します。
相続人全員へ説明できる資料を整えます。
相続の概要と手続きの進め方を丁寧に説明します。
相続人全員で財産の分け方を協議します。
合意内容を正式な書面にまとめます。
預貯金、不動産、証券等の名義変更・承継手続きを進めます。
相続人が多いときの注意点
① 相続人を思い込みで決めない
戸籍で正式に確認することが必要です。
② 全員に同じ情報を伝える
特定の相続人だけが情報を持つ状態は、 不信感につながることがあります。
③ 財産を隠さない
財産一覧を作成し、 可能な限り透明性を持って進めます。
④ 急いで押印を求めない
疎遠な相続人ほど、 十分な説明が重要です。
⑤ 書類を一括管理する
戸籍・印鑑証明書・協議書等を整理して管理します。
⑥ 長期間放置しない
数次相続が発生すると、 さらに相続人が増える可能性があります。
行政書士に相談できること
相続人が多い案件では、 戸籍収集や相続関係の整理だけでも 大きな負担になることがあります。
行政書士は、 争いのない相続手続きについて、 業務範囲に応じて書類作成や資料整理をサポートできます。
- 戸籍・除籍・改製原戸籍等の収集
- 相続人の調査・整理
- 相続関係説明図等の作成
- 法定相続情報一覧図の作成支援
- 相続財産資料の整理
- 財産目録の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 相続人への案内文書等の作成
- 各種相続手続きに必要な書類整理
協議がまとまらない場合や、 調停・訴訟・交渉が必要な場合には 弁護士への相談が必要です。
また、 相続登記の申請代理は司法書士、 相続税の申告・税務相談は税理士の専門分野です。
こんな相続は早めの整理がおすすめです
- 兄弟姉妹が多い
- 甥・姪まで相続人になっている
- 何十年も前の相続が未処理
- 祖父母名義の不動産が残っている
- 相続人の住所が分からない
- 相続人同士がほとんど面識がない
- 海外在住の相続人がいる
- 未成年の相続人がいる
- 認知症の相続人がいる
- 相続人がすでに亡くなり、次の相続が発生している
まとめ
① 相続人が多い場合ほど、最初の戸籍調査が重要です。
② 遺産分割は原則として相続人全員の合意が必要です。
③ 疎遠な相続人でも、勝手に除外することはできません。
④ 相続人の住所が分からない場合には、戸籍の附票等を確認します。
⑤ 財産目録を作成し、全員に同じ情報を示すことが重要です。
⑥ 法定相続情報一覧図を活用すると、複数の相続手続きを効率化できる場合があります。
⑦ 未成年者・行方不明者・判断能力に問題がある相続人がいる場合には、家庭裁判所の手続きが必要となることがあります。
⑧ 相続を放置すると数次相続が発生し、さらに相続人が増えることがあります。
↓
相続人確定
↓
連絡先確認
↓
相続財産調査
↓
財産目録作成
↓
相続人全員へ説明
↓
遺産分割協議
↓
遺産分割協議書作成
↓
預貯金・不動産等の相続手続き
相続人が多いほど、 最初の調査と書類整理を丁寧に行うことが、 後のトラブル防止につながります。
お気軽にご相談ください
「兄弟姉妹や甥・姪まで相続人になっている」
「長年放置していた相続を整理したい」
「遺産分割協議書を作成したい」
といった段階からご相談いただけます。
遺産分割協議書など相続手続きについてご相談いただけます。