子どものいない高齢夫婦こそ「お互いに財産を残す遺言」を考えておきませんか?

子どものいないご夫婦で、 夫にも妻にも兄弟姉妹がおり、その兄弟姉妹には甥・姪がいる――。

さらに、ご夫婦とも高齢となり、 預貯金もある程度あり、 長年住んできた自宅も近年の不動産価格上昇によって 5,000万円を超える価値になっている

このようなご夫婦の場合、 「自分が先に亡くなったら、当然すべて配偶者のものになる」 と思っている方も少なくありません。

しかし、必ずしもそうなるとは限りません。

例えば、このようなご夫婦を考えてみます

夫:80歳 妻:77歳
  • 夫婦に子どもはいない
  • 夫には兄弟姉妹がいる
  • 妻にも兄弟姉妹がいる
  • 兄弟姉妹には、それぞれ甥・姪がいる
  • 預貯金:数千万円
  • 自宅:現在の評価・時価が5,000万円超

ご夫婦としては、 「どちらかが先に亡くなったら、残された配偶者がそのまま自宅に住み、 預貯金も含めて自由に使ってほしい」 と考えているとします。

子どもがいない場合、配偶者だけが相続人とは限りません

亡くなった方に子どもがおらず、 父母・祖父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合、 法定相続人は、 配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹 となります。

兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、 一定の場合、その子である甥・姪が代襲相続人になります。

相続人 法定相続分
配偶者 4分の3
兄弟姉妹 全体で4分の1

つまり、 夫が先に亡くなった場合、 何も準備していなければ、 妻だけでなく夫の兄弟姉妹も相続人となる可能性があります。

自宅が5,000万円を超えると、話はさらに重要になります

例えば、夫名義の自宅が5,000万円、 さらに預貯金もあるとします。

妻がそのまま自宅に住み続けたいと思っていても、 法定相続では妻だけが相続人ではない場合があります。

夫の兄弟姉妹なども相続人となれば、 遺産分割協議に参加してもらう必要が生じる可能性があります。

長年ほとんど交流のなかった兄弟姉妹や、 場合によっては甥・姪にまで連絡を取り、 署名・押印などをお願いしなければならないこともあります。

残された高齢の配偶者にとって、 これは決して小さな負担ではありません。

そこで「配偶者にすべて相続させる遺言」が重要になります

例えば夫が、

「私の所有する財産のすべてを妻〇〇に相続させる」

という内容の有効な遺言を残しておけば、 原則としてその遺言に従って財産を承継させることができます。

妻も同様に、

「私の所有する財産のすべてを夫〇〇に相続させる」

という遺言を用意しておく方法があります。

兄弟姉妹には「遺留分」がありません

ここが、子どものいない夫婦にとって非常に重要なポイントです。

兄弟姉妹には、 法律上の最低限の取り分である 「遺留分」がありません。

そのため、相続人が「配偶者+兄弟姉妹」というケースでは、 配偶者に全財産を相続させる有効な遺言を作成しておけば、 兄弟姉妹は通常、遺留分を請求することができません。

これは、子どものいないご夫婦が遺言を作成する大きな意味の一つです。

ただし、亡くなった方の父母などが存命の場合は別です

子どもがいなくても、 亡くなった方の父母や祖父母などの直系尊属が存命であれば、 兄弟姉妹より先に相続人となります。

そして、直系尊属には遺留分があります。

したがって、 「子どもがいない=配偶者へ全部相続させれば必ず他の請求がなくなる」 とは限りません。

ご夫婦それぞれの家族関係を確認したうえで遺言を設計することが重要です。

夫婦で1通の遺言書を作ってはいけません

「夫婦なのだから、1枚の遺言書に連名で書けばよいのでは?」 と考える方もいます。

しかし、日本の民法では 2人以上の人が同じ証書で遺言をする「共同遺言」は禁止されています。

夫は夫の遺言書、妻は妻の遺言書として、 それぞれ別々に作成する必要があります。

高齢のご夫婦なら公正証書遺言も有力な選択肢です

遺言には自筆証書遺言や公正証書遺言などがあります。

特に、ある程度の預貯金があり、 高額な不動産を所有している高齢のご夫婦では、 公正証書遺言を検討する価値があります。

  • 公証人が本人の意思を確認して作成する
  • 原本が公証役場に保管される
  • 紛失・改ざんのリスクが小さい
  • 家庭裁判所の検認が不要
  • 形式不備による無効リスクを抑えやすい

ただし「お互いに全部相続」だけでは終わらない問題があります

ここからが、特に重要な部分です。

例えば、夫が先に亡くなり、 夫の遺言によって妻が全財産を相続したとします。

その後、妻も亡くなりました。

妻に子どもがおらず、 妻の父母なども亡くなっていれば、 妻の財産は原則として 妻側の兄弟姉妹や甥・姪 へ相続される可能性があります。

この時点では、もともと夫から妻へ移った財産も、 妻の財産として妻側の親族へ承継される可能性があります。

つまり、 「最初に亡くなった人の兄弟姉妹には渡したくない」 という目的だけで、 夫婦がお互いに全部相続させる遺言を作った場合、 最終的には後に亡くなった配偶者側の親族だけへ財産が残る ことがあります。

「最初の相続」と「二人とも亡くなった後」の両方を考えましょう

子どものいないご夫婦の遺言では、 次の2段階を考えることが重要です。

段階 考えること
第1段階 夫・妻のどちらかが先に亡くなった場合、 残された配偶者の生活をどう守るか
第2段階 最後に残った配偶者も亡くなった場合、 財産を最終的に誰へ残したいか

最終的に誰へ財産を残したいのかを夫婦で話し合う

例えば、ご夫婦の考え方として、

  • 最後は夫側・妻側双方の甥・姪へ一定割合で残したい
  • 特に世話になった甥・姪へ残したい
  • 親しい友人へ遺贈したい
  • 福祉団体・公益法人等へ寄付したい
  • 自宅を売却し、一定の割合で財産を分けたい

など、さまざまな希望が考えられます。

その希望によって、 それぞれの遺言書の内容も変わります。

配偶者が先に亡くなった場合も考えておく

遺言書を作る時点では、 夫と妻のどちらが先に亡くなるかは分かりません。

そのため、 「配偶者が自分より先に亡くなっていた場合には、 次に誰へ財産を承継させるのか」 という内容まで遺言に盛り込む方法があります。

「妻に相続させる。ただし妻が先に死亡していた場合は〇〇へ遺贈する」

といった予備的な内容を検討することで、 想定外の順序で相続が発生した場合にも対応しやすくなります。

自宅については「誰が住み、最後にどうするか」も決める

預貯金だけでなく、 現在5,000万円を超える価値がある自宅についても、 将来の方向性を話し合っておくことが重要です。

  • 残された配偶者がそのまま住み続けるのか
  • 高齢者施設へ入所した場合は売却するのか
  • 二人とも亡くなった後は誰へ渡すのか
  • 誰も利用しない場合には売却して金銭で分けるのか

不動産は簡単に分割できないため、 預貯金以上に事前の設計が重要になることがあります。

財産額によっては相続税についても確認しましょう

自宅だけで5,000万円を超え、 さらに預貯金・有価証券などを保有している場合には、 相続財産全体の金額によっては相続税の検討も必要になります。

配偶者には相続税上の大きな軽減制度がありますが、 最初の相続だけを考えてすべて配偶者へ相続させることが、 二次相続まで含めて最善とは限りません。

相続税の具体的な計算や税務上の有利・不利については、 税理士に相談し、一次相続と二次相続を合わせて検討 することをおすすめします。

遺言を作る前に整理しておきたいこと

  1. 夫・妻それぞれの法定相続人は誰か
  2. 兄弟姉妹のうち既に亡くなっている人はいないか
  3. 甥・姪まで含めた親族関係
  4. 自宅の名義は夫・妻・共有のどれか
  5. 預貯金・証券・保険等の財産額
  6. 最初に配偶者へ何を残したいか
  7. 二人とも亡くなった後、最終的に誰へ残したいか
  8. 遺言執行者を誰にするか

子どものいないご夫婦は「遺言を書いておく意味」が特に大きい

子どものいないご夫婦では、 遺言がないことによって、 残された配偶者と兄弟姉妹・甥姪との間で 相続手続きが必要になる場合があります。

「配偶者にできるだけ安心して財産を残したい」 という希望があるなら、 元気で意思能力が十分なうちに遺言を準備しておくことは、 非常に有効な対策の一つです。

ただし、 夫婦がお互いに「全部を相続させる」と書くだけでは、 二人とも亡くなった後の財産の行方まで希望どおりになるとは限りません。

一次相続で残された配偶者を守ることと、 二次相続で最終的に誰へ財産を承継させるのか。

この二つをセットで考えることが、 子どものいないご夫婦の遺言では特に重要です。

川崎駅前通行政書士事務所がお手伝いできること

  • 夫・妻それぞれの相続人関係の確認
  • 戸籍収集・相続関係の整理
  • 財産目録の作成
  • 夫・妻それぞれの遺言書原案の作成
  • 二次相続まで考慮した遺言内容の整理
  • 公正証書遺言作成のための公証役場との調整
  • 遺言執行者についての検討・整理
  • 必要に応じて司法書士・税理士等との連携
子どものいないご夫婦の遺言について、一度整理してみませんか。

「まず配偶者の生活を守りたい」
「二人とも亡くなった後の財産の行き先まで決めておきたい」

それぞれのご希望を伺いながら、 ご夫婦それぞれの遺言内容を整理いたします。

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