
専任技術者の「実務経験10年」を証明する方法
過去の請求書・契約書がない時の対処法
建設業許可を取得したいものの、 許可業種に対応する国家資格を持っていない――。
このような場合でも、 一般建設業では、許可を受けようとする建設工事について 原則10年以上の実務経験があれば、 営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
ところが、ここで大きな問題になるのが、
しかし、昔の契約書や請求書が残っていない」
というケースです。
この記事では、 実務経験10年をどのように確認していくのか、 昔の資料が見つからない場合には何を探せばよいのかを 分かりやすく解説します。
この記事では検索上分かりやすいように 「専任技術者」という言葉も使用しながら、 現在の営業所技術者等の制度について説明します。
① その会社に在籍していたこと
② その会社が該当する建設工事を行っていたこと
③ 本人がその工事について技術上の実務経験を積んだこと
を、申請先の審査基準に沿った資料によって 確認できることが重要です。
契約書・請求書がない場合でも、 他の資料によって確認できる可能性があります。
そもそも「実務経験10年」とは?
ここでいう実務経験とは、 単に建設会社に在籍していた期間ではありません。
許可を受けようとする建設工事について、 施工に関する技術上の職務に従事した経験 が必要です。
実務経験になり得るもの
・工事の施工に直接携わった
・施工を指揮・監督した
・施工管理を担当した
・施工に関する技術上の職務を担当した
それだけでは難しいもの
・一般事務のみ
・経理のみ
・単なる営業業務のみ
・技術上の経験を伴わない事務職
どの工事を経験したかが重要
建設業許可は29業種に分かれています。
したがって、 実務経験も原則として 取得したい許可業種に対応する工事経験 を確認します。
管工事業の許可を取りたい場合には、 給排水設備、冷暖房設備、空調設備、配管設備など、 管工事に該当する施工経験が問題になります。
単に「設備工事を10年間やった」 という説明だけではなく、
具体的にどのような設備工事だったのか
を確認することが重要です。
実務経験では「期間」と「工事内容」の両方を確認
実務経験によって営業所技術者等の要件を満たす場合には、 大きく分けて2つの観点があります。
| 確認すること | 内容 | 資料の例 |
|---|---|---|
| 在籍・経験期間 | 本人がその会社等で必要な期間勤務・従事していたか | 社会保険関係資料、年金関係資料、源泉徴収関係資料など |
| 工事の実績・内容 | その期間に取得希望業種に該当する工事を行っていたか | 契約書、注文書・請書、請求書、許可関係資料など |
まず探したい基本資料
過去の実務経験を確認するときは、 まず次のような資料が残っていないかを探します。
- 工事請負契約書
- 注文書
- 注文請書
- 請求書
- 工事台帳
- 過去の建設業許可申請書
- 決算変更届・工事経歴書
- 建設業許可通知書等
- 社会保険・年金関係資料
- 給与・源泉徴収関係資料等
以前の勤務先が建設業許可業者だった場合
以前勤務していた会社が、 当時、該当業種の建設業許可を受けていた場合には、 過去の許可関係資料が重要になります。
・許可通知書等
・決算変更届
・工事経歴書
・各種変更届
などが残っていないかを確認します。
特に工事経歴書などから、 当時どのような工事を行っていた会社なのかを 確認できる場合があります。
契約書がない場合は「注文書・請書」を探す
建設業では、 すべての案件について 独立した「工事請負契約書」という名称の書類が 保存されているとは限りません。
その場合には、
・自社からの注文請書
・工事内容が記載された発注書
・工事代金や施工場所が分かる書類
などが残っていないかを確認します。
請求書がない場合は何を探す?
古い請求書が廃棄されている場合には、 関連する別の資料が残っていないか確認します。
会社内に残っている資料
・工事台帳
・売上台帳
・工事一覧表
・見積書
・注文書・請書
・施工記録
・過去の決算変更届等
会社外から確認できる可能性のある資料
・発注者側に残る注文書等
・元請会社側の資料
・過去の建設業許可関係資料
・その他行政庁が認める確認資料
「この資料なら必ず10年を証明できる」と 一律に判断しないことが重要です。
過去の「工事経歴書」が重要になることも
建設業許可を持っている会社は、 原則として毎事業年度終了後に 決算変更届等を提出します。
その中には、 工事経歴書が含まれます。
手元に資料がない場合でも、 申請先行政庁に過去の許可関係資料が残っているかなどを 確認する価値があります。
工事資料だけでなく「その会社にいたこと」の確認も必要
例えば10年前の工事契約書が見つかったとしても、 その当時、候補者本人がその会社で 勤務していたことを確認できなければ問題が残ります。
そこで、 在籍期間・勤務期間についても 確認資料を整理します。
- 健康保険・厚生年金関係資料
- 年金記録等
- 雇用保険関係資料
- 源泉徴収票等
- 給与関係資料
- その他在籍期間を確認できる資料
両方を組み合わせて確認することが重要です。
前の会社に協力してもらえる場合
以前勤務していた会社が現在も営業しており、 協力してもらえるのであれば、 まず過去の資料の保管状況を確認しましょう。
自分が勤務していた正確な期間を確認する
その期間に会社がどの建設業許可を持っていたか確認する
契約書・注文書・請求書・工事台帳等を確認する
自分が経験した工事の業種と期間を整理する
申請先行政庁が求める形式・資料に合わせて整理する
前の会社が廃業・解散している場合は?
以前勤務していた会社がすでに廃業・解散していると、 資料集めは難しくなります。
しかし、すぐに諦める必要はありません。
- 自宅等に保存している昔の工事資料
- 元代表者・元役員が保存している資料
- 元請会社や発注者側に残る資料
- 過去の建設業許可関係資料
- 当時の在籍期間を確認できる公的資料
- 閉鎖事項全部証明書等の会社資料
以前の会社が建設業許可を持っていなかった場合
以前の会社が建設業許可を持っていなくても、 軽微な建設工事を適法に請け負っていた会社であれば、 その工事経験が直ちに無意味になるわけではありません。
ただし、許可業者のように 過去の許可申請書や工事経歴書を利用できないため、 工事実績を確認する資料が特に重要になります。
・何の工事か
・いつの工事か
・どこで施工したか
・誰から受注したか
を確認していくことになります。
「1年につき請求書1枚あれば10年分になる」とは限らない
実務経験の確認について、 「1年につき1件の請求書があればよい」 といった説明を見かけることがあります。
行政庁によって、 実務経験期間をどの程度の間隔で、 どのような資料によって確認するのかについて 取扱いが異なることがあります。
10年間ずっと同じ会社である必要はある?
必ずしも、 同じ会社だけで10年間の経験を積んでいる必要はありません。
例えば、
↓
B社で管工事 3年
↓
C社で管工事 3年
合計10年
というように、 取得したい業種についての実務経験を 複数の勤務先で積んでいるケースも考えられます。
ただし、それぞれの会社について 経験期間・工事内容等を確認できる資料が必要になります。
経験期間の「重複」にも注意
複数業種について 10年の実務経験を使って申請しようとする場合には、 経験期間の考え方に注意が必要です。
複数業種の実務経験で申請する場合には、 どの期間をどの業種の経験として扱うのか、 事前に整理することが重要です。
10年分の資料がないなら「別ルート」も確認
10年間の実務経験を証明することだけに こだわる必要はありません。
候補者によっては、 別の方法で営業所技術者等の要件を 満たせる場合があります。
資格を確認する
施工管理技士、建築士、技能士、 電気工事士など、 許可業種に対応する資格を持っていないか確認します。
指定学科を確認する
大学・高専・高校等で 許可業種に対応する指定学科を卒業していれば、 必要な実務経験期間が短くなる場合があります。
資格 → 学歴 → 実務経験 → 代替資料
の順に候補者の状況を整理すると、 別の方法が見つかることがあります。
資料がないからといって「作ってはいけない」
これは非常に重要です。
建設業許可申請では、 事実に基づく資料によって 経験を確認する必要があります。
資料が不足している場合は、 実際に残っている別の資料で確認できないかを検討する ことが正しい対応です。
資料がないときの実務的な5ステップ
本当に10年必要なのか、 資格や指定学科によって短縮できないかを確認します。
いつからいつまで、 どの会社で、何の工事をしていたのかを書き出します。
契約書だけでなく、 注文書、請求書、工事台帳、許可資料等を確認します。
在籍関係資料、過去の許可関係資料、 発注者・元請側の資料などを確認します。
資料を大量に集めてからではなく、 どの資料が確認資料として利用できるかを 最新の手引き等で確認します。
実務経験10年・資料チェックリスト
- 取得したい建設業許可の業種を決めた
- 本当に10年の実務経験が必要か確認した
- 対応する国家資格等がないか確認した
- 指定学科卒業による短縮が使えないか確認した
- 過去の勤務先と勤務期間を整理した
- 過去の建設業許可申請書等を確認した
- 決算変更届・工事経歴書を確認した
- 契約書・注文書・請書を探した
- 請求書・工事台帳等を探した
- 在籍期間を確認できる資料を探した
- 以前の勤務先に資料が残っていないか確認した
- 発注者・元請側に資料が残っていないか検討した
- 申請先の最新の審査基準を確認した
実務経験10年でよくある6つの誤解
誤解①
「建設会社に10年いれば大丈夫」
在籍期間だけではなく、 取得業種に対応する技術上の実務経験が必要です。
誤解②
「本人の職務経歴書だけで証明できる」
本人作成の経歴だけではなく、 行政庁が求める確認資料が重要です。
誤解③
「契約書がなければ絶対に無理」
注文書、請求書、過去の許可資料など、 他の資料が利用できる場合があります。
誤解④
「前の会社が廃業したら経験は使えない」
廃業していても、 公的資料や取引先側の資料等から 確認できる可能性があります。
誤解⑤
「請求書は1年に1枚あれば必ずよい」
必要な資料・件数・期間の確認方法は、 申請先の取扱いを確認する必要があります。
誤解⑥
「10年分の資料がなければ許可は取れない」
資格や指定学科など、 別の要件を利用できる可能性もあります。
将来のために工事資料を残しておきましょう
実務経験の証明で苦労しないためには、 日頃から工事関係資料を整理しておくことが重要です。
- 工事請負契約書
- 注文書・注文請書
- 見積書
- 請求書
- 工事台帳
- 工事経歴書
- 資格証・合格証明書
- 従業員の職歴・工事経験記録
特に将来、 業種追加や 営業所技術者等の交代を予定している会社では、 候補者の実務経験を今から記録しておくと安心です。
行政書士に相談するなら「10年分集めてから」ではありません
実務経験による建設業許可申請では、 資料を10年分すべて集めてから相談する必要はありません。
そのうえで、 申請先の取扱いに照らして 必要な確認資料を絞り込むことで、 効率よく準備を進めることができます。
まとめ
① 10年勤務=10年の実務経験ではありません
取得したい許可業種についての技術上の実務経験が必要です。
② 経験期間と工事内容の両方を確認します
在籍資料だけ、工事資料だけでは足りない場合があります。
③ 契約書・請求書がなくても諦めない
注文書、工事台帳、過去の許可関係資料などを探します。
④ 前勤務先が廃業していても調査する価値があります
公的記録や発注者・元請側に資料が残っている場合があります。
⑤ 10年以外のルートも確認しましょう
資格や指定学科によって、
必要な実務経験が不要・短縮となる場合があります。
⑥ 資料を後から作り直してはいけません
実際に存在する資料を使って、
事実に基づいて申請することが重要です。
② 資格・学歴を確認
③ 過去10年以上の職歴を整理
④ 契約書以外の資料も探す
⑤ 前勤務先・発注者側の資料を確認
⑥ 申請先の審査基準と照合
という順番で調べていきましょう。
「請求書がない=許可が取れない」 と最初から判断する必要はありません。
「この資料で実務経験を確認できる?」 という段階から、お気軽にご相談ください。
業種追加・更新・各種変更届などをサポートいたします。