贈与契約とは? ― 贈与契約書を作る意味と注意点

贈与とは、財産を「あげる人(贈与者)」と「もらう人(受贈者)」との間で、 「あげます」「もらいます」という合意が成立することで成立する契約です。

贈与契約は口頭でも成立します。 しかし、親族間の贈与や高額な財産の贈与では、 後日のトラブルや税務上の疑義を防ぐためにも、 贈与契約書を作成して内容を明確にしておくことが重要です。

特に現金・預金・不動産などの贈与では、 「いつ、誰が、誰に、何を贈与したのか」を書面で残しておくことが大切です。

1.なぜ「贈与契約書」が必要なのでしょうか

贈与契約書を作成する主な理由は、次の3点です。

① 書面によらない贈与の解除リスクを減らすため

民法上、書面によらない贈与は、 まだ履行が終わっていない部分について、 各当事者が解除できる場合があります。

贈与内容を書面にしておけば、 贈与した財産、時期、方法などが明確となり、 後から「そんな約束はしていない」といった争いを防ぎやすくなります。

② 「名義預金」と疑われるリスクを減らすため

例えば、親が子供名義の銀行口座を作り、 そこへ資金を入れていたとしても、 実際には親が通帳や印鑑を管理し、 子供がその預金の存在すら知らなかった場合などには、 相続時に「実質的には親の財産ではないか」と問題になることがあります。

贈与契約書を作成し、 実際に受贈者が財産を管理できる状態にしておくことは、 贈与の事実を説明する一つの資料になります。

③ 「言った・言わない」のトラブルを防ぐため

特に親子・兄弟姉妹などの親族間では、 「贈与だったのか、貸しただけなのか」 「条件付きだったはずだ」 「その金額ではなかった」 といった問題が起こることがあります。

契約書に内容を明記しておけば、 当事者の合意内容を客観的に確認しやすくなります。

2.贈与契約書に記載しておきたい基本事項

贈与契約書では、少なくとも次のような事項を整理しておくことが重要です。

項目 主な内容
贈与者 財産をあげる人の氏名・住所
受贈者 財産をもらう人の氏名・住所
贈与する財産 現金、預金、不動産、株式などを具体的に特定
贈与日 いつ贈与するのか
贈与方法 銀行振込、引渡し、不動産所有権移転など
受贈者の受諾 受贈者が贈与を受けることに同意した旨
条件・負担 条件付き・負担付きの贈与であればその内容
署名・押印 贈与者・受贈者双方の署名押印等
贈与契約書のイメージ

3.贈与契約で注意したい税務・相続上のポイント

① 暦年贈与と年間110万円の基礎控除

暦年課税による贈与では、 受贈者ごとに年間110万円の基礎控除があります。

ただし、 「毎年110万円以内なら、どのような方法でも贈与税がかからない」 と単純に考えるのは注意が必要です。

毎年の贈与が、その都度独立した贈与契約なのか、 それとも最初から一定額を複数年に分けて渡す約束だったのかによって、 税務上の評価が問題になる場合があります。

重要なのは、実際に毎年その都度、 贈与者と受贈者が贈与について合意していることです。

そのため、暦年贈与を行う場合には、 毎年その都度、贈与契約書を作成しておく方法が考えられます。

② 不動産を贈与するときは税金・費用に注意

不動産を生前贈与する場合には、 単に贈与契約書を作成するだけではなく、 税金や登記費用も考える必要があります。

  • 贈与税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 司法書士報酬等

贈与による所有権移転登記の登録免許税は、 原則として固定資産税評価額を基礎に一定の税率で計算されます。

不動産は、生前贈与より相続によって取得した方が、 税負担・諸費用が低くなる場合もあります。

不動産を贈与する場合には、 贈与税だけを見るのではなく、 相続税・登録免許税・不動産取得税などを含めて 税理士等へ事前に確認することをおすすめします。

③ 将来の相続で「特別受益」が問題になる場合があります

相続人となる子供などに対して、 生前に多額の贈与をしていると、 将来の相続で 「特別受益」 として問題になる場合があります。

例えば、特定の子供だけが、 住宅購入資金などとして多額の贈与を受けていた場合、 相続時の遺産分割で、 その贈与を考慮して相続分を計算することがあります。

生前贈与は「贈与した時点」だけでなく、 将来の相続まで見据えて考えることが重要です。

事情に応じて、 特別受益の持戻しを免除する意思表示について検討することもあります。

4.「負担付贈与」という方法もあります

贈与には、 単純に財産を無償で渡すものだけでなく、 受贈者に一定の負担を求める 「負担付贈与」 という方法もあります。

例えば、

  • 自宅を贈与する代わりに、一定の生活支援を行ってもらう
  • 不動産を贈与する代わりに、一定の債務を引き受けてもらう
  • 一定の費用負担を条件として財産を贈与する

といった形が考えられます。

この場合には、 「何を贈与するのか」だけでなく、 受贈者がどのような負担を負うのかを契約書で明確にすること が重要です。

5.「死因贈与」と遺言は違います

「自分が亡くなったら、この財産をあなたにあげる」 という内容で契約するものを 死因贈与といいます。

死因贈与は、 贈与者と受贈者との間の契約です。

これに対して遺言は、 遺言者が単独で行う意思表示です。

項目 死因贈与 遺言
成立 贈与者と受贈者の合意 遺言者の単独行為
効力発生 贈与者の死亡時 遺言者の死亡時
書面 契約書作成が重要 法律上定められた方式が必要

6.行政書士がお手伝いできること

行政書士は、 紛争が生じていない段階での契約書作成など、 将来のトラブルを防ぐための書類作成をお手伝いできます。

  • 贈与契約書の起案・作成
  • 現金・預金等の贈与契約書作成
  • 不動産贈与契約書の作成
  • 負担付贈与契約書の作成
  • 死因贈与契約書の作成
  • 公証役場での確定日付取得の支援
  • 将来の相続を考慮した契約内容の整理

「確定日付」を付ける方法もあります

贈与契約書について、 「この契約書がいつの時点で存在していたのか」を より客観的に示したい場合には、 公証役場で確定日付を付与してもらう方法もあります。

確定日付は、 その文書がその日に存在していたことを証明する制度です。

ただし、 契約書の内容そのものが正しいことや、 実際に贈与が履行されたことまで証明する制度ではありません。

税務・登記は専門士業との連携が必要です

贈与契約には、税務・登記が伴う場合があります。
  • 贈与税の具体的な税額計算・税務相談・申告書作成 → 税理士
  • 不動産の所有権移転登記 → 司法書士
当事務所では、必要に応じて他士業と連携しながら 手続きを進めることができます。

まとめ―「あげたつもり」だけではなく書面で残すことが大切です

親族間の贈与では、 信頼関係があるために、 あえて契約書を作らないケースも少なくありません。

しかし、時間が経った後や相続が発生した後には、

  • 本当に贈与だったのか
  • 貸しただけではなかったのか
  • いつ贈与したのか
  • 誰が財産を管理していたのか
  • 条件付きの贈与だったのか

といった点が問題になることがあります。

贈与は「あげる側」と「もらう側」の合意によって成立する契約です。 だからこそ、その合意内容を契約書として残しておくことが、 将来のトラブル防止につながります。
贈与契約書の作成について、お気軽にご相談ください。

現金・預金・不動産・負担付贈与・死因贈与など、 ご事情に応じた贈与契約書を作成いたします。

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