建設業者に産廃収集運搬業許可は必要?
元請・下請・自社運搬の違いを解説
建設工事では、 解体材、がれき類、木くず、廃プラスチック類、 金属くずなど、 さまざまな産業廃棄物が発生します。
そこで建設業者の方からよく受ける疑問が、 「工事現場から廃材を自社のトラックで運ぶだけでも、 産廃収集運搬業許可が必要なのか?」 というものです。
この問題を判断するとき、 単に 「自社のトラックで運ぶかどうか」 だけを見てはいけません。
重要なのは、 「その産業廃棄物の排出事業者は誰なのか」 という点です。
建設工事に伴って生じる廃棄物については、 廃棄物処理法上、 原則として元請業者が排出事業者 として取り扱われます。
「元請なのか、下請なのか」
を確認することが重要です。
● 元請業者が、自ら排出事業者となる建設廃棄物を自ら運搬する
→ 原則として産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。
● 下請業者が、元請業者が排出事業者となる建設廃棄物を運搬する
→ 原則として産業廃棄物収集運搬業許可が必要となります。
つまり、 「自社のトラックで運ぶ=自社運搬=許可不要」 ではありません。
なぜ建設工事では元請業者が排出事業者になるの?
一般的には、 事業活動に伴って産業廃棄物を発生させた事業者が 排出事業者となります。
しかし建設工事では、 元請業者、一次下請、二次下請など 複数の事業者が一つの工事に関わるため、 誰が排出事業者なのかが 分かりにくくなることがあります。
そこで廃棄物処理法では、 建設工事に伴って生じる廃棄物について、 原則としてその建設工事の元請業者を 排出事業者として扱う 仕組みになっています。
具体例で考えてみましょう
建物の改修工事をA建設会社へ発注
工事全体を請負
解体・撤去作業等を担当
この場合、 実際に解体作業を行ったのが B工事会社だったとしても、 建設工事に伴って生じた廃棄物の 排出事業者は、 原則として元請であるA建設会社 となります。
ケース① 元請業者が自分で運搬する場合
A建設会社が元請として工事を行い、 その工事から発生した産業廃棄物を A建設会社自身が処分場まで運搬するケースです。
排出事業者が 自ら排出した産業廃棄物を自ら運搬する場合 には、 原則として産業廃棄物収集運搬業許可は必要ありません。
ただし、 許可が不要だからといって 自由な方法で運搬できるわけではありません。
排出事業者による自ら運搬についても、 廃棄物処理法に基づく 収集・運搬の基準等を守る必要があります。
ケース② 下請業者が運搬する場合
A建設会社が元請、 B工事会社が下請で、 B工事会社が現場で発生した産業廃棄物を 処分場まで運搬するケースです。
この場合、 排出事業者は原則として 元請のA建設会社です。
B工事会社から見ると、 他者が排出事業者となる産業廃棄物を 運搬する ことになります。
原則として産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
「自社のトラックだから許可不要」は間違い?
ここが建設業者の方にとって 非常に重要なポイントです。
廃棄物処理法上の「自ら運搬」を考えるときには、 車両の所有者だけではなく、 排出事業者自身が運搬しているか を確認する必要があります。
| ケース | 排出事業者 | 運搬者 | 許可の基本的な考え方 |
|---|---|---|---|
| 元請が自社トラックで運搬 | 元請 | 元請 | 原則不要 |
| 下請が自社トラックで運搬 | 原則として元請 | 下請 | 原則必要 |
| 専門の収集運搬業者へ委託 | 元請 | 収集運搬業者 | 運搬業者に適切な許可が必要 |
下請業者は必ず許可が必要なの?
原則は先ほど説明したとおりですが、 建設廃棄物については 法律上の一定の例外的な取扱いもあります。
一定の建設工事について、 法令で定められた要件をすべて満たす場合には、 下請業者による運搬について 特例が適用されることがあります。
ただし、この特例には 工事の内容・請負金額・廃棄物の種類や量・運搬先・ 元請と下請との書面による取決めなど、 複数の条件があります。
元請業者には排出事業者としての責任があります
元請業者は、 単に工事を完成させればよいというだけではありません。
建設工事から発生した産業廃棄物について、 排出事業者として 適正な処理を行う責任があります。
- 発生する産業廃棄物の種類を把握する
- 適正な処理方法を確認する
- 委託先の許可内容を確認する
- 必要な委託契約を適切に締結する
- マニフェストを適切に運用する
- 産業廃棄物が適正に処理されたか確認する
運搬を委託するときは許可証の「品目」まで確認
収集運搬業者が 産業廃棄物収集運搬業許可を持っているからといって、 すべての産業廃棄物を運べるとは限りません。
許可証では、 取り扱うことができる 産業廃棄物の種類 が定められています。
- がれき類
- 廃プラスチック類
- 金属くず
- ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず
- 木くず
- 紙くず
- 繊維くず
解体・改修工事では石綿にも注意
建築物の解体・改修工事では、 石綿を含有する建材が 使用されている場合があります。
石綿含有産業廃棄物等については、 通常の建設廃棄物以上に 適切な取扱いが必要です。
実際の廃棄物の性状と 許可内容を確認する必要があります。
建設現場から他県の処分場へ運ぶ場合は?
収集運搬業許可が必要となる場合には、 どの都道府県等の許可を取得するのかも 重要です。
基本的には、 産業廃棄物を積み込む場所と 荷下ろしする場所 を確認します。
産業廃棄物を積込み
産業廃棄物を荷下ろし
神奈川県 + 東京都
の双方の許可が必要となるのが基本です。
一方、 運搬途中に単に通過するだけの都道府県については、 通常、その通過だけを理由として 許可を取得する必要はありません。
現場の廃材を会社へ持ち帰ってもよい?
「現場から会社の資材置場へ持ち帰り、 翌日まとめて処分場へ運ぶ」 というケースがあります。
この場合には、 積替え・保管 に該当しないかを確認する必要があります。
現場からどこへ運び、 途中でどのように取り扱い、 最終的にどこで荷下ろしするのかまで 事前に整理することが重要です。
建設業許可を持っていれば産廃許可はいらない?
いいえ。
建設業許可と産業廃棄物収集運搬業許可は別の許可制度 です。
| 項目 | 建設業許可 | 産廃収集運搬業許可 |
|---|---|---|
| 根拠となる主な法律 | 建設業法 | 廃棄物処理法 |
| 主な対象 | 建設工事の請負 | 他人の産業廃棄物の収集・運搬 |
| 建設業許可を取得すれば産廃運搬も可能? | いいえ。産廃収集運搬業許可が必要な事業を行う場合には、 別途その許可を検討する必要があります。 | |
建設会社が産廃収集運搬業許可を取得するメリット
下請工事が多い建設会社などでは、 産業廃棄物収集運搬業許可を取得することで、 適法な範囲で元請業者から 収集運搬を受託できるようになります。
業務範囲を広げられる
建設工事だけでなく、 許可された範囲で 産廃の収集運搬業務にも対応できます。
元請からの依頼に対応
元請業者から産廃運搬を 適法に受託するための体制を 整えることができます。
工事と運搬を整理しやすい
工事施工と産廃運搬を 自社の業務として組み合わせる場合の 選択肢が広がります。
許可内容を明確にできる
取り扱える産廃の種類や 許可区域を明確にして 事業を行うことができます。
建設会社が産廃許可を取る前に確認すること
- 元請工事と下請工事の割合
- どの工事からどの産廃が発生するか
- 誰が排出事業者になるか
- どの産廃を運搬したいか
- 積込みを行う都道府県
- 荷下ろしを行う都道府県
- 使用する処分場
- 積替え・保管を行うか
- 使用する車両
- 必要な運搬容器
- 講習会の受講状況
- 会社の財務状況
- 役員等の欠格要件
建設会社が産廃収集運搬業許可を取得する流れ
元請・下請、工事の種類等を整理
誰の産業廃棄物を運ぶのか整理
がれき類・木くず・廃プラスチック類等を整理
積込み場所・荷下ろし場所を確認
建設業者によくある産廃運搬の誤解
| よくある考え方 | 実際に確認すべきこと |
|---|---|
| 自社のトラックだから自社運搬 | 排出事業者自身による運搬かどうかを確認します。 |
| 自分たちが解体したから自社の産廃 | 建設廃棄物では原則として元請業者が排出事業者です。 |
| 下請だから少量なら自由に運べる | 原則として許可の要否を確認し、特例を利用する場合には法令上の要件を個別に確認します。 |
| 建設業許可があるから産廃も運べる | 建設業許可と産廃収集運搬業許可は別制度です。 |
| 産廃許可が1つあれば全国で運べる | 積込み場所・荷下ろし場所に応じて必要な許可を確認します。 |
| 会社へ一晩置くだけなら問題ない | 積替え・保管に該当しないか確認が必要です。 |
建設業と産廃業をまとめて確認することが重要です
建設会社では、 建設業許可だけを確認していても 十分でない場合があります。
実際の事業内容によっては、 産業廃棄物収集運搬業許可のほか、 さまざまな許認可や届出が 関係することがあります。
行政書士は、 建設業許可や産業廃棄物収集運搬業許可などについて、 事業内容を確認しながら 必要な許認可の整理や申請書類の作成・申請手続きを サポートすることができます。
建設業者向け・産廃運搬チェックリスト
- 今回の工事は元請か下請か確認した
- 産業廃棄物の排出事業者が誰か確認した
- 誰が産業廃棄物を運搬するのか確認した
- 「自社トラック=自ら運搬」と判断していない
- 下請運搬の場合、許可の要否を確認した
- 特例を利用する場合、その要件を個別に確認した
- 運搬する産廃の種類を確認した
- 石綿含有産業廃棄物等の有無を確認した
- 積込み場所を確認した
- 荷下ろし場所を確認した
- 必要な都道府県等の許可を確認した
- 委託先の許可証を確認した
- 許可証の産廃品目まで確認した
- 積替え・保管の有無を確認した
- 委託契約・マニフェスト等を適切に運用している
まとめ
① 建設工事に伴って生じる廃棄物は、原則として元請業者が排出事業者となります。
② 元請業者が、自ら排出事業者となる産業廃棄物を自ら運搬する場合には、原則として産廃収集運搬業許可は不要です。
③ 下請業者が元請業者の産業廃棄物を運搬する場合には、原則として産廃収集運搬業許可が必要です。
④ 「自社のトラックで運ぶこと」と「排出事業者による自ら運搬」は同じ意味ではありません。
⑤ 下請業者による運搬には一定の特例がありますが、法令上の要件を満たしているか個別に確認する必要があります。
⑥ 元請業者には、排出事業者として産業廃棄物を適正に処理する責任があります。
⑦ 委託先については、産廃許可の有無だけでなく、運搬する産廃品目が許可範囲に含まれているか確認することが重要です。
⑧ 収集運搬業許可が必要な場合には、積込み場所・荷下ろし場所から必要な許可区域を確認します。
⑨ 現場から会社等へ産廃を持ち帰る場合には、積替え・保管に該当しないか注意が必要です。
⑩ 建設業許可と産廃収集運搬業許可は別制度です。実際の事業内容から必要な許可を判断しましょう。
↓
元請業者は誰か?
↓
原則として元請業者が排出事業者
↓
誰が運ぶ?
元請自身が運ぶ
→ 原則として収集運搬業許可不要
下請・別会社が運ぶ
→ 原則として収集運搬業許可が必要
ただし、建設廃棄物には一定の特例もあるため、 実際の工事内容を確認して判断することが重要です。
お気軽にご相談ください
「自社のトラックなら許可不要なのか確認したい」
「建設業許可と一緒に産廃業許可も取得したい」
「神奈川県・東京都で産廃を運搬したい」
「どの産廃品目を取得すればよいか分からない」
「自社の事業に必要な許可を整理したい」
といった段階からご相談いただけます。
元請・下請の関係、実際の運搬方法、必要な許可区域・品目等を確認しながら、
必要な手続きを整理いたします。