
建設業許可の最大の壁「専任技術者」とは?
実務経験や資格の要件をわかりやすく解説
建設業許可を取得する際、 多くの会社にとって重要なポイントとなるのが 「専任技術者」の要件です。
「国家資格を持っていないと許可は取れないのか?」 「10年間現場で働いていれば大丈夫?」 「以前の勤務先での経験は使える?」 など、さまざまな疑問が生じます。
従来「専任技術者」と呼ばれていた制度は、 法改正により現在は「営業所技術者等」という名称になっています。
ただし「専任技術者」という言葉は現在も広く使われているため、 この記事では「専任技術者(営業所技術者等)」として説明します。
一般建設業では、主に
① 対応する資格を持っている
② 指定学科+一定の実務経験がある
③ 原則10年以上の実務経験がある
などの方法によって要件を満たせる可能性があります。
専任技術者(営業所技術者等)とは?
営業所技術者等は、 建設工事の請負契約が適正に締結・履行されるよう、 営業所において技術面を担う重要な人材です。
例えば次のような点が重要になります。
- どの建設業種について許可を取得するのか
- その業種に対応した資格を持っているか
- 必要な実務経験があるか
- その経験を資料で確認できるか
- 営業所で職務を行える勤務実態があるか
「経管」と「専任技術者」は別の要件
建設業許可では、 技術面だけでなく、 建設業の経営管理を適正に行うための体制も必要です。
| 区分 | 主な意味 | 確認の中心 |
|---|---|---|
| 経営業務の管理体制 | 建設業の経営管理を適正に行うための体制 | 役員等の経営経験など |
| 営業所技術者等 (旧・専任技術者) |
営業所における技術面の要件 | 資格・学歴・実務経験等 |
一般建設業で要件を満たす代表的な3つのルート
① 資格ルート
許可を受けようとする業種に対応した 国家資格等を持っている場合です。
資格によっては、 長期間の実務経験を証明しなくても 要件を満たせる場合があります。
② 指定学科+実務経験
建築、土木、電気など、 許可業種に対応する指定学科を卒業している場合、 一定の実務経験と組み合わせて 要件を満たせる場合があります。
③ 実務経験ルート
資格や指定学科を利用しない場合でも、 許可を受けようとする建設工事について 原則10年以上の実務経験によって 要件を満たせる場合があります。
① 資格で要件を満たす
最も確認しやすいのが、 許可業種に対応する資格を持っている場合です。
例えば、資格・免許等には、
- 施工管理技士
- 建築士
- 技術士
- 電気工事士
- 一定の技能士
- その他、業種ごとに認められた資格等
などがあります。
資格ごとに営業所技術者等になることができる 許可業種が定められています。
② 指定学科+実務経験で要件を満たす
許可業種に対応する指定学科を卒業している場合には、 必要な実務経験年数が短縮される場合があります。
| 学歴等 | 必要となる実務経験の代表例 |
|---|---|
| 大学・高等専門学校等の指定学科 | 卒業後、原則3年以上 |
| 高等学校・中等教育学校等の指定学科 | 卒業後、原則5年以上 |
| 指定学科等による短縮を利用しない場合 | 原則10年以上 |
③ 「10年の実務経験」で要件を満たす
資格や指定学科による要件を利用できない場合でも、 一般建設業では、許可を受けようとする建設工事について 原則10年以上の実務経験があれば、 営業所技術者等になれる場合があります。
重要なのは、 許可を受けようとする業種について 施工に関する技術上の実務経験 があることです。
「実務経験」として認められるのは?
実務経験とは、 建設工事の施工に関して 技術上の職務に従事した経験をいいます。
対象となり得る経験
・工事の施工に直接携わった
・施工を指揮・監督した
・施工管理を行った
・その他施工に関する技術上の経験
注意が必要な経験
・一般事務だけをしていた
・経理だけを担当していた
・単なる営業業務のみだった
このような経験だけでは、 通常、施工に関する実務経験とはなりません。
本当の壁は「10年あるか」ではなく「証明できるか」
実務経験で申請する場合、 非常に重要になるのが その経験を確認できる資料が残っているか という点です。
という本人の説明だけではなく、
いつ・どの会社で・どの業種の工事について 実務経験を積んだのか
を、申請先が求める方法で 確認できることが重要になります。
実務経験の確認に使われる資料
具体的な確認資料は申請先や案件によって異なりますが、 例えば次のような資料を確認することがあります。
- 工事請負契約書
- 注文書・請書
- 請求書等
- 過去の建設業許可関係書類
- 工事内容を確認できる資料
- 在籍期間・勤務状況を確認できる資料
- 資格証・合格証明書等
- 卒業証明書等
以前の勤務先での経験も使える?
以前勤務していた会社で積んだ経験でも、 許可業種に対応した実務経験であり、 必要な確認ができれば利用できる場合があります。
しかし、前職の経験を利用する場合には、 資料収集が難しくなることがあります。
- 前の会社が廃業している
- 当時の契約書等が残っていない
- 昔の工事内容を確認できない
- 勤務していた期間を確認する資料がない
資格だけでは足りない―営業所での勤務実態も重要
資格を持っている人を見つければ、 それだけで営業所技術者等として申請できるわけではありません。
営業所技術者等は、 その営業所において職務を行う者である必要があり、 実際の勤務関係・勤務実態が重要になります。
申請では、社会保険関係資料など、 申請会社との勤務関係を確認する資料が 必要になることがあります。
社長自身が営業所技術者等になることはできる?
可能です。
代表取締役や取締役であっても、 許可業種について必要な資格・実務経験等を満たし、 営業所技術者等として必要な勤務実態があれば、 営業所技術者等になることができます。
ただし、それぞれの要件を個別に満たしているか 確認する必要があります。
「主任技術者・監理技術者」とは何が違う?
営業所技術者等と、 主任技術者・監理技術者は役割が異なります。
| 区分 | 主な役割 |
|---|---|
| 営業所技術者等 | 営業所で請負契約の締結・履行を技術面から支える |
| 主任技術者・監理技術者 | 工事現場において施工の技術上の管理を行う |
一定の要件を満たす場合には、 営業所技術者等が主任技術者等を兼ねることができる場合もありますが、 現場の状況や法令上の条件を個別に確認する必要があります。
特定建設業はさらに厳しい
特定建設業については、 一般建設業より厳しい技術者要件が設けられています。
1級施工管理技士などの一定の国家資格者
または
法令で定められた要件を満たす者
などが必要となります。
技術者が突然退職したらどうなる?
営業所技術者等は、 許可申請時だけ必要な人ではありません。
建設業許可を維持している間も、 継続して要件を満たす必要があります。
そのため、資格者が一人しかいない会社では、 その人が退職すると大きな問題になることがあります。
許可取得後は「次の技術者」を育てることも重要
建設業許可を長期的に維持するためには、 一人の技術者だけに依存しない体制を考えることも重要です。
- 従業員に施工管理技士等の資格取得を促す
- 実務経験を記録・保存する
- 工事契約書・注文書等を整理して保管する
- 将来の業種追加を考えて資格者を育成する
- 退職・異動時の後任候補を把握しておく
許可申請前に確認する6ステップ
まず29業種のどの許可を取得するのかを確認します。
その業種に対応する資格を持つ役員・従業員がいるか確認します。
指定学科卒業による実務経験期間の短縮が利用できるか確認します。
どの工事について何年間の技術上の経験があるか整理します。
契約書、注文書、請求書、資格証など必要な資料を確認します。
営業所技術者等として実際に職務を行える状態か確認します。
まとめ
① 現在の正式名称は「営業所技術者等」
従来「専任技術者」と呼ばれていた重要な技術者要件です。
② 一般建設業では複数のルートがあります
資格、指定学科+実務経験、原則10年以上の実務経験などがあります。
③ 「10年勤務」と「10年の実務経験」は同じではありません
許可業種に対応する施工上の技術経験であることが重要です。
④ 実務経験は「証明・確認できるか」が重要
契約書・注文書等の資料を早い段階で調査することが大切です。
⑤ 許可取得後も営業所技術者等は必要です
退職・異動を考え、後任者の確保や人材育成も重要になります。
「10年の実務経験で足りる?」
「前の会社の経験を使える?」
「どんな証明資料が必要?」
営業所技術者等の要件には複数のルートがあります。
まずは、 取得したい業種・資格・学歴・職歴・過去の工事資料 を整理して確認することが重要です。
業種追加・更新・決算変更届・各種変更届・経審などをサポートいたします。