「普通借家契約」と「定期建物賃貸借契約」の違いとは?
貸主・借主が契約前に確認すべきポイント
店舗や事務所、住宅を貸し借りするとき、 建物の賃貸借契約には大きく分けて 「普通借家契約」と「定期建物賃貸借契約」 があります。
どちらも建物を貸し借りする契約ですが、 契約期間が満了したときの取扱いが大きく異なります。
特に貸主にとっては、 「契約期間が終わったら確実に明渡してもらえると思っていた」 という認識違いが大きな問題になることがあります。
借主にとっても、 「当然更新できると思っていたのに、 期間満了で契約が終了した」 という事態は避けたいところです。
↓
契約期間満了後も、 一定の場合には更新して賃貸借関係が続きます。
定期建物賃貸借契約
↓
適法に成立していれば、 契約期間の満了によって契約が終了し、 更新はありません。
引き続き貸し借りしたい場合には、 当事者双方が合意して 新たに再契約をする方法があります。
普通借家と定期建物賃貸借を比較
| 項目 | 普通借家契約 | 定期建物賃貸借契約 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 契約で定める | 契約で一定の期間を定める |
| 期間満了 | 当然に賃貸借関係が終了するとは限らない | 適法に成立していれば期間満了で終了 |
| 更新 | 更新があり得る | 更新はない |
| 再契約 | 通常は「更新」の問題となる | 双方が合意すれば、新たな契約として再契約することが可能 |
| 契約方法 | 契約内容に応じて書面で作成するのが一般的 | 法令上の方式・説明等の要件に注意が必要 |
| 貸主からの終了 | 更新拒絶や解約申入れには借地借家法上の制約がある | 期間満了による終了を前提とする |
普通借家契約とは?
普通借家契約は、 一般的に広く利用されている 建物賃貸借契約です。
例えば、
として契約していても、 2年間が経過すれば 必ず借主が退去しなければならない、 という意味ではありません。
契約期間満了時には、 合意更新や法定更新などによって 賃貸借関係が継続する場合があります。
貸主側からの更新拒絶や解約申入れについては、 借地借家法上の制約があり、 正当事由等が問題となることがあります。
定期建物賃貸借契約とは?
定期建物賃貸借契約は、 あらかじめ定めた契約期間が満了すると 更新されることなく終了する 建物賃貸借契約です。
例えば、
2028年9月30日まで
という定期建物賃貸借契約であれば、
原則として2028年9月30日の期間満了により 契約を終了させる仕組み です。
ただし、 期間満了後も貸主・借主双方が 引き続き賃貸借を希望する場合には、 新たな定期建物賃貸借契約を締結する「再契約」 を行うことがあります。
「更新」と「再契約」は違います
定期建物賃貸借契約について、 特に理解しておきたいのが 「更新」と「再契約」の違いです。
🔄 更新
現在の賃貸借契約を 一定の形で継続することです。 普通借家契約では更新が問題となります。
📝 再契約
現在の定期建物賃貸借契約をいったん終了させ、 双方が合意した場合に、 新しい契約をあらためて締結します。
定期建物賃貸借は、 期間満了で契約が終了することを前提とした制度です。
引き続き使用させる場合には、 「再契約」として 新たな契約関係を作ることを検討します。
定期建物賃貸借は、契約書に「定期」と書くだけでは不十分
ここは貸主側にとって非常に重要です。
定期建物賃貸借として扱うためには、 借地借家法に基づく 方式・説明等の要件に注意する必要があります。
- 定期建物賃貸借として適切な方式で契約しているか
- 契約期間が明確に定められているか
- 更新がなく期間満了によって終了することが明確か
- 貸主側から必要な事前説明が適切に行われているか
- 説明に関する記録・書面等を適切に残しているか
契約書の名称ではなく、 法律上必要な要件を満たしているか を確認することが重要です。
期間満了の「終了通知」にも注意
定期建物賃貸借では、 契約期間が1年以上の場合、 貸主が期間満了による終了を借主に対抗するために、 一定の期間内に期間満了の通知をすること が必要となる制度があります。
ただし、通知時期を過ぎた場合の法律上の扱いには 細かなルールがありますので、 実際の契約では個別に確認する必要があります。
したがって、 定期建物賃貸借では、 契約を締結したときだけではなく、 期間満了前の管理も重要になります。
貸主にとって定期建物賃貸借を利用するメリット
① 契約期間を明確にできる
適法に設定すれば、 いつまで貸すのかを あらかじめ明確にしやすくなります。
② 将来の利用計画を立てやすい
建替え、自社利用、テナント構成の変更など、 将来の物件利用を考えやすくなります。
③ 再契約時に条件を見直せる
再契約する場合には、 双方の合意のもとで賃料や契約条件等を あらためて検討できます。
④ 契約関係を整理しやすい
期間満了という明確な区切りを設けて 賃貸借関係を管理できます。
借主が特に確認したいこと
借主の場合は、 「長く借りたい」と考えていても、 定期建物賃貸借であれば 期間満了後に当然に契約を継続できるわけではありません。
- 契約期間は何年間か
- 期間満了日がいつか
- 更新のない契約であることを理解しているか
- 再契約について契約書にどのように記載されているか
- 再契約が保証されているわけではないことを理解しているか
- 再契約料があるか
- 再契約時に賃料変更の可能性があるか
- 設備投資を契約期間内に回収できるか
借主が多額の内装工事費や設備費を負担したにもかかわらず、 短期間の定期建物賃貸借で 再契約できなかった場合、 投資を十分に回収できない可能性があります。
定期建物賃貸借でも「中途解約」はできる?
「定期」だからといって、 契約期間の途中で絶対に解約できない、 という意味ではありません。
事業用賃貸借では、 契約書に 中途解約条項を設けることがあります。
「借主は6か月前までに書面で通知することにより、 本契約を中途解約することができる」
などの条項です。
また、 一定額を支払うことによって 即時解約を認める条項を設ける場合もあります。
契約書にどのような中途解約条項があるかを 確認する必要があります。
契約終了時の原状回復も必ず確認
普通借家でも定期建物賃貸借でも、 退去時には 原状回復が大きな問題になることがあります。
特に店舗や事務所では、
- 内装
- 間仕切り
- 空調設備
- 配管
- 看板
- 照明
- 厨房設備
- 造作
再契約料を定める場合は明確に
事業用の定期建物賃貸借契約では、 再契約する場合に 再契約料を定めることがあります。
その場合には、 後から認識の違いが生じないように、
- 再契約料はいくらか
- 賃料の何か月分か
- 消費税の取扱い
- いつ支払うのか
- 再契約が成立しない場合はどうなるのか
普通借家と定期建物賃貸借、どちらを選ぶ?
どちらが常に優れている、 というものではありません。
普通借家が向いている場合
長期間安定して使用してもらうことを重視する場合や、 更新を前提とした賃貸借関係を希望する場合などです。
定期建物賃貸借が向いている場合
一定期間で賃貸借関係を区切り、 その時点で継続するかを改めて判断したい場合などです。
何年間貸したいのか
将来物件をどう使いたいのか
長期入居を希望するのか
一定期間ごとに条件を見直したいのか
を考えます。
借主であれば、
何年間営業したいのか
設備投資はいくらか
長期利用が必要なのか
期間満了後に退去しても問題ないか
を考えることが重要です。
契約前のチェックリスト
- 普通借家か定期建物賃貸借か確認した
- 契約開始日・終了日を確認した
- 更新か再契約かを確認した
- 定期建物賃貸借の必要な方式・説明等を確認した
- 期間満了通知について確認した
- 中途解約できるか確認した
- 解約予告期間を確認した
- 違約金・即時解約金を確認した
- 再契約料を確認した
- 保証金・敷金の返還条件を確認した
- 原状回復の範囲を確認した
- 設備・造作の撤去条件を確認した
行政書士に賃貸借契約書を相談するメリット
賃貸借契約では、 賃料や契約期間だけではなく、 契約終了までを考えて 条項を作成することが重要です。
行政書士は、 行政書士が取り扱うことのできる範囲で、 契約条件を整理し、 賃貸借契約書等の 権利義務に関する書類の作成を 支援することができます。
契約期間、再契約、中途解約、 保証金、原状回復などを 一つの契約書として整合的に整理する必要があります。
すでに貸主・借主で争いがある場合は?
賃貸借契約について、 すでに相手方との法的紛争が生じており、 代理交渉・訴訟等が必要となる場合には、 弁護士への相談を検討する必要があります。
まとめ
① 普通借家と定期建物賃貸借では、期間満了時の取扱いが大きく異なります。
② 普通借家は、契約期間満了だけで当然に賃貸借関係が終了するとは限りません。
③ 定期建物賃貸借は、適法に成立していれば期間満了によって終了し、更新はありません。
④ 期間満了後も貸し借りを続ける場合には、双方の合意による「再契約」が考えられます。
⑤ 定期建物賃貸借は、契約書に「定期」と書くだけではなく、法律上の方式・説明等の要件を確認する必要があります。
⑥ 1年以上の定期建物賃貸借では、期間満了前の終了通知にも注意が必要です。
⑦ 中途解約、保証金、再契約料、原状回復なども契約締結前に確認することが重要です。
↓
賃料・保証金
↓
契約期間中
↓
中途解約
↓
期間満了
↓
更新または再契約
↓
退去・原状回復
↓
保証金等の精算
この一連の流れを 契約締結前に整理しておくことで、 将来の認識違いやトラブルを 減らすことにつながります。
お気軽にご相談ください
定期建物賃貸借契約書、再契約、中途解約、原状回復などについて、 契約内容を整理して書面作成を支援します。
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